ローボールテクニックとは
ローボールテクニックとは、はじめに相手が承諾しやすい好条件を出し、徐々に相手にとって不利な条件を突きつける手法のことをいいます。条件や要求をボールにたとえ、“低いボールから投げる”というところから、その名がついています。
ローボールテクニックは、「一貫性の原理」を利用した心理テクニックであるといえます。一貫性の原理とは、”一度決心した行動や発言、信念などを貫き通したい”という人間の心理をいい、相手の承諾を一旦得ることで、次の条件を断りづらくさせるという巧みな心理操作です。
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ビジネス心理学とは?ローボールテクニックの例
身近なローボールテクニックをご紹介しましょう。
衣料品などのショップに行くと、「店内最大70パーセントオフ」という張り紙がされていることがあります。70パーセントという好条件につられ、ついつい店内に足を運んでしまうのですが、実際は店内の全商品が70パーセントオフというわけではなく、ほんの一部だった……なんてこと、ありませんか?
気に入った商品を見つけたものの、その商品は新作で定価のまま。しかし、店員さんに勧められてそのまま購入してしまうなんてことも。これはまさしく、身近に潜むローボールテクニックの一例です。
ローボールテクニックの事件
ローボールテクニックを悪用すると、事件にまで発展することがあります。
ローボールテクニックは、よく詐欺行為などに使われます。2013年に明るみに出た、アメリカのMRIインターナショナルによる巨額詐欺事件。8700人の被害者は全員日本人の投資家で、計1300億円を騙し取られたという悪質な事件でした。
派手なうたい文句で出資を煽り、「その資金を運用し、利益を出資者に還元する」と言っておきながら、実際には新たな出資者から得た資金を「配当金」と偽り、旧出資者に渡しているだけという、いわゆるポンジスキームと呼ばれる詐欺です。
ローボールテクニックを恋愛で応用する方法
ローボールテクニックは、実は恋愛の場面でも応用できます。
たとえば、Aさんには現在付き合っている恋人がいたとします。しかし、Bさんという魅力的な異性が現れ、心が動いてしまいました。何度か会っているうちに、BさんもAさんに対して好意を抱くようになります。
AさんとBさんは「結婚を前提に」付き合い始めるのですが、冒頭でも述べたように、Aさんには恋人がいます。Aさんははじめ、そのことを隠してBさんと付き合うわけですが、Bさんの気持ちがそれなりに高まっている状態で恋人がいることを打ち明けます。
すると、Bさんの中にはAさんへの愛情があるため、Aさんが別の恋人と別れるまで待つという決断をせざるを得なくなります。要は、自分にとって不利な条件を隠し、相手にとっておいしい条件をエサに釣るというテクニックなのです。
ローボールテクニックとフットインザドアの違い
ローボールテクニックとよく似た心理テクニックに、「フットインザドア」があります。
フットインザドアは、段階的要請法とも呼ばれています。まずは小さな頼みごとを承諾させてから、徐々に大きな頼みごとを承諾させていくといった手法です。「一貫性の原理」を利用しているという点が、ローボールテクニックとの共通点です。
しかし、大きく違う点があります。フットインザドアは要求を個別に提示していくのに対し、ローボールテクニックでは要求の内容自体には一貫性があるものの、本来の(悪い)条件は相手に知らせないという特徴があります。
ローボールテクニックは恨みを買いやすい
ようするに、ローボールテクニックは”ずるい”手法ということです。一言で言えば、後出しジャンケンのようなものです。もっと言ってしまえば、”嘘をつく”わけですから、当然騙した相手から恨みを買いやすくなります。
ビジネスにしろ恋愛にしろ、せっかく事がスムーズに進んでいたのに、このテクニックを使ったばっかりに失敗に終わるということもありえます。ですので、”使うため”に覚えておくのではなく、こちらが”騙されないため”に知っておいたほうがよいテクニックです。