社会的ジレンマとは

社会的ジレンマとは

社会的ジレンマとは、社会の中でそれぞれの個人が協力的か利己的かを選択できる状況で、個人にとっては合理的で利己的な選択を行った場合に、社会にとっては非合理的な悪い結果になってしまうといった状況を表したものです。

例えば国民が払っている税金ですが、もしこれを払わなくてもよければ、個人にとっては利己的な選択だと言えます。しかし社会全体から見ると、国民全員が税金を払わなくなってしまった場合、国家の財政は成り立たなくなってしまうことになります。

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社会的ジレンマの事例

私たちの生活の中で、社会的ジレンマとして捉えられる事象はさまざまです。身近な例として、車の渋滞について考えてみましょう。

朝の通勤ラッシュ時には特に多く見られますが、車が信号待ちで混雑している状況で、無理に車線変更して割り込んでくる車があります。個人にとっては会社に早く着けるようにと、合理的な判断を行っていることになりますが、大勢の人々が同じように自身の利益を優先した場合、渋滞は更にひどくなってしまいます。

更にその渋滞は、救急車・消防車など公共機関の通行障害を引き起こす場合もあり、社会にとっては非合理な結果が生じてしまうことになるのです。

社会的ジレンマの解決方法

個人の合理性を追求するか、社会の利益を考えるのかという選択は、コミュニティ(集団)の規模が大きくなればなるほど、統制が難しくなってしまいます。それでは、私たちはどのような行動で社会的ジレンマを解決すればよいのでしょうか?

それは一人ひとりが社会的ジレンマを解決しようという基本的な姿勢を持つことです。そして独りよがりな解決案ではなく、お互いが直接話し合って協力して問題解決に取り込むことが重要です。コミュニケーションをとることによって、それぞれの情報を伝達して理解してもらい、利害関係を調整することで、解決への道筋が導き出されてくるのです。

いじめ問題~戦争問題まで、それぞれのコミュニティ(集団)の規模は異なりますが、第一に話し合いの場を作ることが社会的ジレンマを解消する第一歩だと言えるでしょう。

社会的ジレンマと環境問題

社会的ジレンマの中で、誰もが関わっているのは環境問題です。私たちは日々の中で、時間や手間をできるだけ抑えて、自己の利便性や快適な生活を優先するような行動になりがちです。

そのため、次々と新しい商品を購入しては大量の廃棄物を出し、タバコや空き缶のポイ捨てをする、ゴミの分別をしない、といった行動は多く見られます。

個人にとっては最も楽で便利な選択かもしれませんが、社会の人全員が同じ考えで行動するとゴミの量は増え、ゴミ処理にかかる費用もどんどん膨れ上がってしまいます。自分だけが環境問題に取り組んでも意味がないという考え方が集積して、環境問題を生み出してしまうのです。

社会的ジレンマの実験と問題点

社会的ジレンマの解決方法を探るために、現在では心理学・経済学・社会学・生物学などあらゆる学問で研究が行われています。その中の一例としては、以下のような実験結果があります。

1)全員が非協力的だった場合に500円をもらえる
2)全員が協力的だった場合に1000円がもらえる
3)他の人間が協力的だが、自分だけ裏切った場合に、自分だけ2000円もらい、他の人間は0円になる

以上のような選択肢があった場合に、「人々はどのような行動をとるか」という実験です。単なる個人への質問であれば、社会的ジレンマの事象は顕著に表れ、3)を選択する人が多くなります。しかし相手がいて、お互いに協力することがわかった場合は 2)を選択する人が多いという結果になっています。

このことから、人間は常に利己的に考えるわけではなく、「他の人たちがするなら」という原理で行動していると言えるでしょう。

社会的ジレンマを解決するには、このような協調行動は大切な要素のひとつです。しかし全ての人間が個人で考えなくなると、一部の強い思想によってコミュニティ(集団)が支配されるという問題も孕んでいます。個人の考えを持ちつつ、社会への協力的な姿勢が大切です。

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