起業セミナーの実態|主催者があなたに知られたくない秘密

あなたは、起業について考えたことはありませんか? 将来、独立する。好きなことを仕事にする。自由なライフスタイルを送る。起業には色々なメリットがあります。

そして昨今は、株式会社さえ30万円程度の金額で作れるようになりました。起業することのハードルは下がったのです。

そうした社会的な背景が追い風となり、ちまたでは起業を考えている人を対象とした「起業セミナー」がいろいろと開催されています。

起業セミナーは、うまく利用すればあなたの起業の成功に役立ってくれます。しかし、利用の仕方を間違えば、あなたの人生を狂わせてしまうこともあります。

私は今まで、のべ50回を超える起業セミナーに参加してきました。逆に、主催者として、起業セミナーの主催も私はしてきました。その立場から、起業セミナーの実態と秘密についてご紹介します。

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目次 〜起業セミナーの実態と主催者が隠している秘密〜

1.そもそも、起業セミナーとは?

2.起業セミナーに行くべき人、行くべきではない人

3.起業セミナーの種類と特徴

4.起業セミナー参加者の3つのタイプ

5.セミナー主催者が語る2つの秘密

6.起業セミナーの効果的な活用方法

7.起業の実態と私の恥ずかしい過去

8.起業セミナーはかしこく有効活用しよう

1.そもそも、起業セミナーとは?

そもそも、起業セミナーとは?

起業セミナーとは、その名前のとおり、「起業を考えている人向けのセミナー」のことです。内容は、起業の仕方や、起業した後のことについて、情報を提供しています。

起業セミナーで主に話されることが多い内容:

  • 会社を設立する方法
  • 事業計画書の作り方
  • マーケティングやセールス
  • ビジネスモデルの作り方
  • 融資や補助金を受ける方法

また、呼び方は異なりますが、創業セミナーも、起業セミナーと内容は基本的に同じものだと思って下さい。

2.起業セミナーに行ってもいい人、行くべきではない人

起業セミナーに行ってもいい人、行くべきではない人

まず、覚えておいて欲しいことがあります。それは、起業セミナーは、あなたの起業の成功を約束するものではない、ということです。その理由は、主催者は「自分の目的」のために、起業セミナーを開催している場合が多いからです。

例えば、なぜ税理士が起業セミナーを開催しているか分かりますか? あなたに、会社を設立してもらたいからです。その後に、「あなたの会社の税務顧問になりたい」というのが彼らの目的です。それ以上でもそれ以下でもありません。

税理士は税金関係は強いです。が、セールスが得意という税理士の方はほとんどいません。そのため、税理士が開催する起業セミナーに行っても、まずセールスは学べないでしょう。

このように、なんの目的意識のないまま参加しても、時間とお金の浪費となりやすい。「なんとなく」という目的で起業セミナーに参加しても、「なんとなく」の結果しか手に入らないのです。

では、まず、起業セミナーに行ってもいい人と、行くべきではない人をご紹介します。

2−1.起業セミナーに行ってもいい人

自分が起業にするにあたって、得たい知識が「具体的に」決まっている人は起業セミナーに行ってもいいでしょう。たとえば、「融資について知りたい!」とか、「集客について知りたい!」というように、目的がすでに明確になっている人です。

こういう人にとっては、起業セミナーは安い値段で専門家の意見を聞くことができるため、参加してもいいでしょう。本やインターネットでは分からないようなことでも、セミナーなら質疑応答の時間に質問することができます。

加えて、「したいことが見つかっていないけど、起業がしたい」と考えている人も、起業セミナーに足を運んでみてもよいでしょう。セミナーに参加することで、起業がどういったものか知ることができたり、自分のしたいことが見つかったりするからです。

2−2.起業セミナーに行くべきではない人

「ラクに稼ぎたい」と考えている人は起業セミナーには行くべきではありません。こういう人たちは、起業セミナーに行ってもほとんど効果がないからです。

私の起業の経験からお伝えしますが、起業には楽なことはありません。特に立ち上げたときは本当に大変です。私の場合、それこそ1日の食費が数百円といった時さえありました。しかし、その努力があったから今があります。

「ラクに稼ぎたい」と考えている人は、少しでも複雑な話が飛び出すと、すぐに心が折れるのです。「むずかしい。もっと楽に稼げる方法を教えてくれるセミナーへ行こう」と考えるわけです。

その結果、いろいろなセミナーに参加しまくる、「セミナー難民」状態になりやすい。ありもしない「ラクに稼げる方法」を探してさまよい続けることになりますので、こういう考えの人は起業セミナーには行くべきではありません。

あえてきびしいことを申し上げますが、「ラクに稼ぎたい」と考えている人は、そもそも起業するべきではないとも言えます。

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3.起業セミナーの種類と特徴

起業セミナーの種類と特徴

一口に起業セミナーといっても、費用も、学べる内容も色々あります。内容は似ているようで全くちがうので、初心者にはわかりにくいでしょう。

ここでは、セミナー主催者別に分けて、代表的な4つの種類をご紹介します。また、主催者がセミナーを開催している目的を説明しますので、ぜひ参考にして下さい。

補足ですが、価格は2時間1000円〜5000円くらいが主流です。ただし、研修会社が主催する起業セミナーはもう少し高額な場合もあります。

3−1.地方公共団体が主催するセミナー

これは、県や市がその地域住民を対象にして主催するセミナーです。と言っても、県や市の職員がセミナーで教えるわけではありません。彼らは、起業の専門家ではないので教えられないからです。ですので、県や市と提携した士業の方や経営者の方がそれぞれの専門分野について話していることが多いです。

主催者の目的は「地域の産業振興」のため。あくまで私見ですが、あまり役に立たないことが多いと感じています。

その理由は、儲かっている経営者の方がこうしたセミナーの講師になることがまずないからです。儲かっている経営者の方であれば、自分のビジネスをした方がリターンが大きいですよね。自分の大切な時間をつぶしてまで、話す必要がありません。

こう考えると、あまりオススメできません。

3−2.研修企業が主催するセミナー

これは、文字通り研修企業、セミナー会社が主催するセミナーです。学べる内容は「営業を教えます」というものから「認定資格を出します」というものまでさまざま。

主な内容としては、

  • 営業(対面営業、コンサルティング営業)
  • 集客(インターネット集客、DM、Fax-DM……)
  • ビジネスモデル
  • 起業の考え方

などです。

価格も、数千円のものから数百万円のものまで色々あります。研修企業は高額な研修を売って、そのお金で経営していますので、どうしても高価格になります。仮に安い起業セミナーだったとしても、そのセミナーの最後に高額なセミナーを販売している場合が多いです。

なんとなくという理由で、高額なセミナーに申し込んでしまわないようにしてください。

3−3.士業が主催するセミナー

これは、士業と呼ばれる職業の方が主催するセミナーです。具体的には下のような、「士」という言葉が最後につく職業が士業です。

  • 行政書士
  • 司法書士
  • 税理士

場合によっては、コンサルタントやコーチなど、人に教える職業の方が主催するセミナーもこれにふくまれます。

それぞれの士業の立場から、起業するのに必要な内容を教えてくれます。たとえば、税理士なら税金や法人設立の方法などです。

前述しましたが、主催者の目的は、あなたに起業をしてもらった後、あなたに顧問契約を結んでもらいたいからです。汚い表現で恐縮ですが、早い話が、あなたにつばをつけておきたいのです。

この、士業が主催するセミナーに参加してもいいとは思いますが、早まって顧問契約を結ばないよう要注意。

「セミナーで話すのがうまい」ということと、「実務ができる」というのは全く別だからです。特に初心者は、専門家のむずかしい話に対して「すごい!」と思いがちなので気をつけてください。

3−4.金融機関が主催するセミナー

地方銀行や信用金庫といった金融機関が主催するセミナーです。どのように事業資金の借り入れたらよいかなどを、金融機関の立場から教えてくれます。起業後の金融機関との付き合いについて理解できるでしょう。

主催者の目的は、参加者に事業資金の借り入れをしてもらうことです。

ただ、注意して欲しいのは、借り入れをしなければ起業できないわけではないということ。むしろ逆で、借り入れをすると起業の難易度が上がります。必要な借り入れなら構いませんが、不必要な借り入れはしないようにしましょう。

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4.起業セミナー参加者の3つのタイプ

起業セミナー参加者の3つのタイプ

ここまで読んでいただけたらわかると思いますが、私はすべての人に起業セミナーをおすすめしたいのではありません。むしろ逆で、本当に必要なごく一部の人だけに参加をおすすめしたいのです。

ここでは、起業セミナーをおすすめする順に、セミナー参加者の3つのタイプをご紹介しましょう。

4−1.起業したい内容が決まっている人

「私はこれで起業したい!」と、起業する内容が決まっている人……こういった方には、起業セミナーはおすすめできます。

こういう人の場合、セミナーを受けながら「これは起業に使える!」と必要なことを判断できるでしょう。逆に、なにが必要でないかも見極めることもできます。目的意識をはっきりと持っていて、実際に起業をすることが多いタイプです。

また、このタイプの人は起業セミナーを片っ端から全部参加しなくて大丈夫です。自分の目的にあった起業セミナーに行くことで、時間とお金の節約になります。

参加のポイントは、「あなたが学びたいことが、講師の専門分野になっているか?」です。

たとえば、あなたがカウンセラーで起業すると決めているとしたら、成功したカウンセラーの方が開催している起業セミナーに参加した方がいいでしょう。ITビジネスの経営者が開催している起業セミナーに行っても得られるものが少ないはずです。

4−2.起業したい内容が決まっていない人

「私はこれで起業したい」ということが決まっていない人です。多くの場合、「なんとなく起業や経営者に憧れているから」という動機でセミナーに参加することが多いです。

いわゆる「自分探し中」という方々です。したいことが見つかった場合は起業をする場合もあります。が、結局起業する内容を決められずにいつまでも自分探しを続ける人も多いです。

予算の許す範囲で、いろいろな業界を知るために起業セミナーに行ってみるのもよいでしょう。

私からのおすすめは、消去法で自分のしたくない業種をとにかくたくさんリストアップすること。そして、そのリストアップした業種「以外」で探すと案外みつかったりします。たとえば、私の場合は肉体労働が嫌いなので、肉体労働以外の業種から選ぶようにしました。

また話はそれますが、実際に起業をして「成功している人」と「成功していない人」の両方に、

  • 起業してよかったこと
  • 起業して苦労したこと

などの話を聞きに行ってみてください。起業セミナーでは聞けない生の声が聞けます。起業に対する視野が広がると思います。

もしあなたが、起業して「ライフワークを実現させたい」と考えているなら、こちらの記事をお読みください。この記事では、ライフワークを実現した著者が、ライフワークの本当の意味や見つけ方、実現方法を紹介しています。

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4−3.そもそも起業する気のない人

私自身、いろいろな起業セミナーに参加してきました。また、起業セミナーの主催もしてきました。

その経験から感じるのは、「そもそも起業する気のない人」が、かなりの数、起業セミナーに参加している、ということです。

「起業する気もないのに、どうして起業セミナーに行くの?」と思われたかもしれません。実は、このタイプの人たちは起業がしたいのではなく、今の職場から離れたいだけなのです。

こういう人たちが起業セミナーに参加するのは「起業をして世の中の役に立ちたい」とか「世の中に、自分が救いたい人がいる」という前向きな理由ではない場合があります。

中には、後ろ向きな理由の方もいます。「上司に怒られたので、会社を辞めたい」とか、「10歳年上の上司の給料明細を見て、自分の将来の年収がそんなに上がらないことに気づいたので、今の仕事を続けたくはない」とか。

会社を辞めたいとは思っているものの、起業をすることに情熱があるわけではないのです。結局、起業のむずかしさを知り、あきらめてしまうのがこのタイプの人に多く見られる特徴です。このタイプの人たちの本音は、「本業以外の収入がほしい」とか、「もっと自由な時間がほしい」という場合が多いです。

もし、あなたがこのタイプの人にあてはまる場合は、「本当はどんな結果が得たいのか?」をもう一度考えてみて下さい。そして、副業や週末起業など、起業以外の手段も検討してみてください。

そうすると、より自分にあった選択をすることができるでしょう。

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5.セミナー主催者が語る2つの秘密

セミナー主催者が語る2つの秘密

私は今まで、いろいろな起業セミナーに参加してきました。また、起業セミナーの主催もしてきました。その立場から、あなたに知っておいてほしい秘密を2つお伝えします。

5−1.セミナー参加者を勧誘する参加者の存在

起業セミナーに参加されている方の多くは、今の自分の生活に不満を持っていたり、現状を変えようと思っている方がほとんどです。実は、そうした参加者に自分の商品を売りつける参加者がいるのです。

以前、私がとある起業セミナーに参加した時の体験談をご紹介しましょう。当時、私は、セミナーで知り合った参加者に「今度会いましょう」と誘われました。

後日、特に深く考えず、その参加者との待ち合わせ場所に行ったところ、なにが起こったと思いますか? なんと、その参加者のオフィスに連れ込まれたのです。そして、オフィスの4人掛けの机に、私の他に3人の男性が座り、囲まれてしまいました。

あげくの果てには、「私の50万円のコンサルティングを受けませんか?」とハードセールスをされたのです。断っても、断ってもしつこく勧誘され続けたのです。今思い出しても、腹が立ちます……。

このように、起業したいと考えている人に、なにかを売りつける参加者というのは案外多いものです。ネットワークビジネスや、コンサルティング、ノウハウの契約を迫ってくる人には気をつけましょう。

「今度、2人でお茶しませんか?」とか、「ノーリスクの投資があるので説明会にきませんか?」といったように、別の場所に誘い出されたら特に注意して下さい。

5−2.いつまでも起業をさせない主催者

注意しなければいけないのは、参加者だけではありません。セミナー主催者にも注意する必要があります。なぜなら、セミナーの主催者の中には、あなたの起業の成功を望まない人もいるからです。

これは、どうしてだと思いますか? その理由は、参加者が起業で成功してしまうと、主催者が開催する高額な起業セミナーに、申し込む必要がなくなってしまうからです。

ですので、あなたがいますぐ起業しないように不安感を煽ったり、新しい手法を紹介してみたりします。

  • 「これからの時代はYouTubeで集客するといいですよ」
  • 「起業して成功したいなら、もっと精神面をきたえないとダメですよ」
  • 「LINEを使うと安く顧客獲得ができますよ」

こんな具合で、「あなたにはこれが必要ですよ、あれも必要ですよ」と、色々なセミナーをどんどん開発しては、結局売ってばかりの会社もあります。

これは、悪質な英会話教室と同じ手口ですね。生徒が英語を話せるようになってしまうと、それ以降レッスンに来なくなってしまう。そこでわざと、いつまでも英語を話すことができないような教え方をするのです。

覚えておいて欲しいのですが、50万円の起業セミナーに参加したからといって、50万円稼げるようになるとは限らないのです。

6.起業セミナーの効果的な活用方法

起業セミナーの効果的な活用方法

それでは、起業セミナーはどうやって活用すればいいのでしょうか?

ここでは、主催者の立場からおすすめできる3つの方法をご紹介します。まず、この順に試していってください。

6−1.まずは安いものから試す

「安かろう悪かろう」という考えのもと、いきなり高いセミナーに申し込まれる人もいます。ですが、まずは5000円以内の安いものを受けてみてください。

そして、講師と自分の相性を判断してください。下手に高いお金を払って、講師との相性が悪いと最悪です。

また、安い起業セミナーを受講しながら、本当に起業をしたいのかを考えてみましょう。別に起業する必要がなければ、起業しなければいいのです。

6−2.過去の参加者が結果を出しているかを調べる

起業セミナーを受ける際は、過去の参加者の「お客様の声」を要チェック。過去にその起業セミナーを受けた人が、実際に起業をした後も順調に事業を継続しているかを調べてみましょう。

最近ではお客様の声として過去の参加者の名前が実名で載っていることが多いので、検索して調べてみるのも手です。

セミナー講師がビジネスで成功していても、その教え子がビジネスで成功していないのであれば、受講する意味はほとんどありません。「名選手、名コーチにあらず」という言葉のとおりです。

6−3.主催者側と仲良くなる

難易度は高いですが、一番オススメしたい方法がこれです。主催者と仲よくなることです。

主催者、あるいはセミナー講師は、ある程度ビジネスでうまくいっている場合が多いです。ですので、主催者と仲よくしておけば

  • 自分が起業した際に、役立つ人を紹介してくれる
  • 個人的な相談に乗ってもらえる
  • セミナーの裏側の話をしてくれる

など、ビジネスの先輩から大きな協力を得られることとなります。

起業セミナーに限ったことではないですが、セミナー主催者は基本的に人手不足になりがちです。そこで、仲よくなるために、運営を手伝ってあげましょう。たとえば、セミナー主催者が会場設営でイスを並べているときなどには、率先して手伝うと好感度が上がります。

また質問の時間に積極的に手を上げて、セミナー講師に顔を覚えてもらいましょう。場合によっては、セミナー後に回答のお礼を伝えにいくのも有効です。

なお、セミナーをさらに効果的に活用したい場合はこちらの記事をお読みください。
良いセミナー、悪いセミナーの見分け方や、主催者と親密になる方法、セミナーの服装等について解説しています。

あなたは「何か新しいことを知りたい」「良いセミナーないかな?」と思っていませんか? セミナーに参加するといろいろなことを勉強できたり、新しい出会いがあったりと楽しいものです。私は大学生の頃からセミナーに参加することが好きで、これまでに400万円以上を...

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7.起業の実態と私の恥ずかしい過去

起業の実態と私の恥ずかしい過去

さて、ここまでいろいろとお伝えしてきましたが、最後にあなたに質問したいことがあります。

あなたは、そもそも本当に起業がしたいですか? 単に「会社を辞めたいから」という理由だけで起業をすると、取り返しのつかないことになります。

たしかに起業をすると、会社に縛られることはなくなります。しかし、起業したばかりの時は、あなたがほとんどの業務をこなさなければなりません。商品開発、サービス提供、管理、販売、集客……その他すべてです。そのため1日に14時間以上働いているという起業家も多いです。

ところが、「会社を辞めて起業したい」という動機から起業した人は、会社を辞めた瞬間に満足してしまうのです。事業に対してやる気が起きなくなるという場合が多いので注意が必要です。

かくいう私自身も、最初は「上司との人間関係が苦痛だから」とか、「会社からの束縛を離れて自由になりたいから」という動機で起業をしました。その結果、上司との人間関係と会社の束縛からは解放されました。

しかし、それだけで満足してしまいました。その結果、1ヶ月以上やる気が起きなかったのです。今思い返しても恥ずかしいですが、仕事もせずに毎日10時間以上も寝て過ごす生活を送りました。

その間に活動資金は底をつきました。「起業とは名ばかりで、ずっと働かない」と、家族からの信用も失ってしまいました。何もかもゼロ、いやマイナスになりました。そのマイナスの状態から事業を軌道に乗せるのは、とても苦労したのです。

もちろん、すべての人が私のような状態になるわけではありません。ただ、私が主催したセミナー参加者の方でも、「会社を辞めたい」という理由だけで起業をした方は、会社を辞めた直後に無気力になっているケースが多かったのです。

これからお伝えすることは、実際の起業セミナーでもよく語られている内容ですが、この内容を知った上で、「それでも本当に起業がしたいのか?」を考えてみてください。

7−1.起業のリスク

日本でどれだけの事業が潰れているかご存知ですか? 経済産業省の発表によれば2009年は420万人いた個人事業主や社長は、2012年までの3年間の間に385万人になりました。

3年間で35万人の個人事業主や経営者が事業をたたんでいます。別の言い方をすると、4分30秒ごとに1人が廃業しているという計算になります。

中小企業・小規模事業者の変化
集計結果(速報値)

2009年(企業全体に占める割合) 2012年(企業全体に占める割合) 増減数(率)
中小企業・小規模事業者(全産業) 420万者(99.7%) 385万者(99.7%) ▲35万者(▲8.3%)
うち小規模事業者(全産業) 366万者(87.0%) 334万者(86.5%) ▲32万者(▲8.8%)
全規模(大企業と中小企業・小規模事業者の合計、全産業) 421万者 386万者 ▲35万者(▲8.3%)

※2012年2月時点

引用:経済産業省

それに加えて、いったん会社を離れて再就職した場合、以前の職場よりも年収が下がる場合が多いです。年齢にもよりますが、万が一起業に失敗すると大変なのです。

このことについて、株式会社リクルートホールディングスの研究機関である、リクルートワークス研究所の論文が、その原因について触れています。日本の労働市場は、その企業に長く勤め続けている生き抜き組に比べると、転職者というだけで評価が低くなりがちだからです。

参考:リクルートワークス研究所 萩原牧子(著)『彼らは本当に転職を繰り返すのか—アジアの転職実態,転職要因効果の実証分析—

また、実力主義のアメリカや中国とちがって、日本では個人の能力よりもその企業への勤続年数が評価される背景事情があります。そのため、起業で失敗して再就職する場合は今の職場よりも収入が下がる可能性があります。実際の調査でも、全体の約半数の46.4%の方が転職の結果、前職よりも年収が下がったと回答しています。

転職した会社の内定時に提示された年収について教えて下さい

年収500万円が700万円に!――。そんな広告を見た記憶はありませんか?

脳天直撃のキャッチコピーに刺激され、ついつい転職を考えてしまった方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、この手の広告に対しては、ウソではないものの疑いの目を向けてください。転職すると年収アップするより、実はダウンする確率の方が高いのです。

半年ほど前のデータですが、リクルートエージェントが2010年9月に発表したデータによると、転職前後で年収は「前職よりは下がった」が46.4%。一方、「前職よりは上がった」は38.3%になっています。

引用:メディアとWebと人材と:「転職で年収アップ!」はウソ?

以上が起業のリスクです。

7−2.雇用される身のメリット

起業した場合、その瞬間からあなたは自分の収入を自分で作らなければなりません。しかし、雇用されていている身なら、基本的には最低賃金以上の給料は保証されることになります。

また、起業家というのは信頼がありません。企業に所属していないため、事業が軌道に乗るまではクレジットカードやローンの審査が厳しくなります。一方で、正社員なら社会的にも高い信用力を持っているため、クレジットカードやローンの審査で苦労することは少ないでしょう。

起業家には、当然のことながら有給休暇もなければ、ボーナスといった福利厚生もありません。それどころか、社員を雇った場合はあなたがその福利厚生を提供する立場になります。逆に、雇用されている身であれば、有給休暇やボーナスといった福利厚生の恩恵も受けることができます。

このように、会社員だと当たり前のものを、起業をすると失ってしまうのです。

7−3.第三の道、週末起業

  • 「そうは言っても起業をしてみたい」
  • 「今の仕事のまま人生を終えたくはない」
  • 「もっと収入を増やしたい」

そういう方には、第三の道をご提案します。

それは、今の仕事を続けながら起業をすることです。いわゆる週末起業というものです。土日と、平日の夜を使って起業をするのです。

今までお伝えしたとおり、一度会社を離れて失敗すると、以前よりも条件の悪い環境で働く可能性が高くなります。
ですので、とりあえず起業をされたい方には週末起業がオススメです。

週末起業についてくわしく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

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8.起業セミナーはかしこく有効活用しよう

まとめ|起業セミナーはかしこく有効活用しよう

毎日全国のいたるところで起業セミナーが開催されています。そこには数多くの方が参加されていますが、残念ながら、起業をして成功する人はその中でもごく限られた人だけです。

つまり、起業というのは生半可な気持ちでは成功しない、ということです。

起業自体は1日でできますが、今のあなたの職場は1日で取り戻すことはできません。その点は充分気をつけてください。起業の決断の前には、さまざまなリスクを想定し、起業までの計画をしっかりと立てましょう。そして、起業セミナーはかしこく有効活用することをオススメします。

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