法人化とは? 意味やメリット、手続き、費用などを解説!

法人化とは(法人成りとは)、「年収が高くなった個人事業主が、おもに節税のために法人を設立する」という意味です。会社ごとに若干の違いはありますが、経済的にメリットがある法人化のタイミングは「年収500万円を安定的に稼げるようになったら」です。

この記事では、起業支援をしてきたコンサルタントの私が、法人化の意味やメリット、手続き、費用などを徹底的に解説します。また私自身、過去に3社を立ち上げた経験もあるため、その体験談もご紹介することにしました。

なお、この記事は税理士が顧問契約欲しさにするセールストークではありません。客観的に、第三者の視点から説明しますので信用して読んでいただければと思います。

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目次 〜法人化とは? 意味やメリット、手続き、費用〜

1.法人化(法人成り)とは何か? 意味を解説

2.法人化(法人成り)のメリット 4つ

3.法人化(法人成り)のデメリット 4つ

4.法人化(法人成り)の手続きや費用、タイミング

5.法人化はとにかく慎重にことを進めよう

1.法人化(法人成り)とは何か? 意味を解説

法人化(法人成り)とは何か? 意味を解説

前述したとおり、法人化(法人成り)とは年収が高くなった個人事業主が、おもに節税のために法人を設立することです。なぜわざわざ法人を設立するのか? その一番の理由は、やはり経済的なメリットです。

それでは次の章から、その具体的なメリットを見ていきましょう。

2.法人化(法人成り)のメリット 4つ

法人化(法人成り)のメリット 4つ

この章では、法人化のメリットを見ていきます。メリットの大きい順にご紹介します。

※なお、法人化のデメリット4つについては次の章でお伝えします

2-1.節税できる(給与所得控除、退職金、社宅、消費税など)

法人を設立するには20万円強のコストが必要で、それなりのお金もかかります。しかしそれを差し引いても余りあるメリットがあるので、多くの人は法人化をしているのです。

法人化の経済的なメリットとして、色々な方法で節税できることがあげられます。ここでは代表的な節税の方法をご紹介しましょう。

法人化による節税の例

方法 解説
給与所得控除 たとえば年収800万円の場合、法人化すれば200万円もの給与所得控除を受けられる。個人事業主で年収800万円だと税金は188万円だが、法人化すれば税金は126万円となり、年間62万円の節税となる。
退職金 個人事業主の場合は退職金の優遇はないため、2000万円の所得をもらうと約700万円の税金がかかる。法人化して2000万円を退職金でもらうと、税金は36万円(勤続30年の場合)となり、約664万円の節税となる。
社宅 家賃を仮に10万円として、仮に8割を経費とできた場合、年間では96万円を経費にできる。法人税率を25%とすると、96万円×0.25=24万円の節税が毎年できる。
消費税 法人設立から2年間は、消費税が免除される。2年とも年商1千万円で、消費税を8%とすると、2年間で160万円の節税になる。(※注)

※注:法人設立から半年間で課税売上高が1000万円以下または、給与が1000万円以下のどちらかを満たし、かつ資本金が1000万円未満の場合のみ。

この表に書いた以外にも、法人化には色々な経済的なメリットがあります。もし個人事業主で年収500万円を継続的に超えそうであれば、積極的に法人化を検討してみてください。

2-2.社会的な信頼を得られ、採用などがしやすくなる

あなたが就職希望者だったとして、個人事業主の代表のもとで働きたいですか? 少なくとも、私ならノーです。当然ですが、株式会社を作っている社長のもとで働きたい。

なぜなら、個人事業主だと、吹けば飛ぶようなイメージがあるからです。ご理解いただけますよね? 法人化していると、安心感があるので採用活動をしやすくなるメリットがあるのです。

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2-3.融資や資金調達などを受けやすくなる

これは前章の内容ともかぶりますが、法人化していれば安心感があるため、融資や資金調達を受けやすくなります。仮に個人事業主のときと同じ業績だったとしても、第三者保証がなくても融資を受けられることもあります。

しかし、いくら法人化していたとしても、業績が非常に悪ければ融資は受けられません。当然といえば当然ですが。

また、法人化して、申請すれば助成金をもらうことができます。助成金とは、国や地方自治体がタダでお金をくれる、とてもありがたいしくみです。なんと甘美な響きなんでしょう(笑)。

助成金の申請は本来はとても面倒ですが、このブログ「ビジネス心理学」には、他人に教えてもらいながらカンタンに申請する方法が載っています。著者が実際に試して、約50万円を手にした方法です。詳細はぜひ、こちらの記事をご覧ください。

あなたは助成金と聞いてどう感じますか? 私はなんとなく、手続きがメンドウそうだと感じていました。ところが、商工会が主催するセミナーに出席し、教えてもらった通りに手続きをしたところ、一発で助成金の審査をクリアできたのです。これについては、私自身の体...

2-4.経営のリスクが軽くなる

「個人事業主は無限責任だが、株式会社は有限責任」ということを聞いたことがありませんか? 縁起でもない話ですが、事業が倒産した際のことを考えてみましょう。株式会社の場合、出資額までしか責任を追う必要はありません。

しかし、個人事業主が倒産した場合、自分の資産を全て払ってでもすべて弁済しないといけないのです。つまり、株式会社の場合、万が一のときでも自分が出資したお金がなくなるだけで、貯金まで身ぐるみはがされることはないのです。

3.法人化(法人成り)のデメリット 4つ

法人化(法人成り)のデメリット 4つ

前章までで、法人化のメリットはご理解いただけたと思います。しかし、法人化にもいくつかのデメリットがあります。

鼻息を荒くして法人化して、あとから「こんなはずではなかった」と後悔しないように、さきにデメリットを理解しておいてください。デメリットの大きい順にご紹介しましょう。

3-1.色々な経費がかかる(法人登記費用、法人住民税)

法人化をすると、色々な経費がかかることは覚えておきましょう。最初に払うことになるのが法人設立の費用です。20万円強のコストがかかると思っておきましょう。

株式会社の法人設立費用

費用 電子認証定款 紙の定款
登録免許税 15万円 15万円
定款印紙代 なし 4万円
公証人手数料 5万円 5万円
合計 20万円 24万円

※なお、紙の定款と電子認証定款には違いがないため、費用が安い後者をおすすめします。ただし、電子認証定款は専門業者に法人設立を代行する以外に選べません。もちろん私も専門業者に法人設立を代行してもらって電子認証定款を選択しました。

ご参考までに、合同会社の法人設立費用も書いておきます。ただし、合同会社は株式会社に比べて社会的信用がないため、おすすめしませんが。

費用 電子認証定款 紙の定款
登録免許税 6万円 6万円
定款印紙代 なし 4万円
公証人手数料 なし なし
合計 6万円 10万円

なお、株式会社も合同会社も、その他に謄本などで数千円がかかります。

さらに法人住民税というものが、たとえ赤字だったとしても毎年7万1000円かかります(法人住民税とは、県民税と市民税の均等割課税のことです)。

ですので、毎年年収500万円以上を安定して取れる自信がついてから法人成りするのがいいでしょう。赤字なのに7万1000円かかるのはもったいないですからね。

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3-2.法人税は複雑なため税理士が必須になる

法人の会計は複式簿記を使うため、とても複雑です。私は学生時代から会計についての勉強をしていましたが、そんな私でも頭を抱えます。もし、変な申告をしようものなら税務署から目をつけられますから。

そのため、よっぽど数字に強い人でなければ、法人化した後は税理士は必須です。つまり、年間で最低数十万円は税理士に払うお金がかかると思ってください。

とはいえ、税理士が不要だと言いたいのではありません。税理士を雇うことで、自分では絶対に気づけない節税の方法を教えてくれることはよくあるからです。私が今もなお、税理士を雇っているのにはこうした理由があります。

3-3.会社のお金と個人のお金が区別される

個人事業主の場合、お金をジャブジャブと使い込んだとしても、誰にも文句は言われません。しかし、もし法人化をしてしまうと、会社のお金は個人のお金とは明確に区別されます。個人事業主とは個人のことですが、法人とは個人のことではないのです。

法人化をすると、役員報酬という形で会社から給料のような形でお金をもらうのです。そして、この役員報酬だけが好き勝手に使えるのです。この役員報酬以外のお金を会社から引き出すと、それは会社からあなたへの貸付となり、利息の計算が必要となります。

税理士には、「この引き出したお金はどういう用途ですか?」と1つ1つ細かくチェックされることになるでしょう。面倒なのですが、法人化とはそういうものなのです。

3-4.社会保険が強制加入になる

基本的に同じ収入の場合だと、厚生年金や健康保険の方が、国民年金や国民健康保険よりも保険料が高くなります。そして、困ったことに法人化すると社会保険が強制加入になるのです(個人事業主の場合、従業員が5名以下なら任意加入です)。

さて、会社員で社会保険に入っている場合、半分を会社が、もう半分を自分で払いますよね。しかし、法人化をして自分で社会保険に入る場合、個人の分も法人の分も両方とも払うことになるため、負担額は純粋に2倍になってしまいます。

もちろん、「社会保険へ加入すれば年金が確保される」というのが国の言い分です。が、賢明なあなたなら、そんなはずはないと思いますよね。毎年のように年金の運用は損失を出し続けていますし、人口減の日本では年金という「子どもからお金を吸い上げるシステム」がいつまで持ちこたえるかは分かりません。

ですから、社会保険料はある種の税金と割り切って払うのがいいでしょう。

4.法人化(法人成り)の手続きや費用、タイミング

法人化(法人成り)の手続きや費用、タイミング

法人化のメリットとデメリットを理解した後で、手続きや費用、タイミングを具体的に見ていきましょう。

4-1.法人化のタイミングは、年収500万円

前述したとおり、法人化のタイミングは「年収500万円を超えてから」です。そして、これは1年だけではありません。来年以降もしばらくは年収500万円を超える自信がついてからです。

法人の場合、赤字だったとしても法人住民税が7万1000円かかりますから、年収が500万円以下になるなら法人化はしない方がいい。

ところで、会社員からすると、「株式会社を作るなんてすごい!」とか「代表取締役になると格好いい!」と思う人も多いのですが、この考え方はとても危険です。そういう人ほど、最低でも年収500万円を毎年とれる自信がないのに、法人化してしまうからです。

実際に、過去に3社を立ち上げた経験がある私からすると、法人なんてお金さえ払えば誰でも作れますし、代表取締役なんて誰でもなれます。

そういった自己顕示欲や承認欲求に身を任せて、年収500万円を安定的に稼ぐ自信がないのに法人化をするのはやめてくださいね。

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4-2.法人化の費用は合計で21万円程度

法人設立の作業はとても面倒でむずかしいので、普通は専門業者に委任します。さらに言うと、面倒さ以外にも、専門業者に依頼する理由があります。それは、法人設立を自力でやると、専門業者に依頼するよりも高くつくのです。

法人設立費用の表をもう一度載せるので、見比べてください。

費用 電子認証定款 紙の定款
登録免許税 15万円 15万円
定款印紙代 なし 4万円
公証人手数料 5万円 5万円
合計 20万円 24万円

自力で法人を設立する場合、紙の定款しか選べないため、必ず24万円がかかります。しかし、専門業者にお願いすると電子認証定款の20万円で済むのです。もちろん代行費用もかかりますが、これは安いところだと1万円程度でやってくれます。

そのため、電子認証定款の費用20万円+専門業者の代行費用1万円程度=合計で21万円程度で済むのです。自力で行った場合に比べて、約3万円程度お得になります。

4-3.法人設立代行業者の選び方、比較

Googleで「法人設立 代行」で検索すると、信じられないくらいのサイトが表示されます。なかには、「弊社は手数料ゼロでやらせていただきます!」という会社もたくさんあります。これでは、何が良いのか分かりませんよね。

まず、手数料ゼロの代行業者は、ほとんどの場合、税理士または会計士なのです。

つまり、「法人はうちで無料で作ってあげるよ。だから、会社を設立したら必ずうちと顧問契約を結んでね」ということです。顧問契約を結んだら、月額数万円、年間で数十万円のお金をとれるので、彼らは手数料ゼロでやろうとしているのです。

しかし、税理士によって、業種の得意・不得意があります。私のおすすめは、早まってそういった手数料ゼロ業者にお願いしないこと。必ず、自分の業種が得意な税理士と顧問契約を結ぶようにしましょう。

弊社の場合、IT系の会社なので、ITに強い税理士にお願いしています。ここで、私の失敗談をご紹介しましょう。

以前私はITに弱い税理士と顧問契約を結んでいたことがありました。しかし、その税理士にIT用語の説明をイチイチする必要がありましたし、IT系の節税の方法も知らなかったのです。まったく話にならなかったので契約を解除したのです。

今は、ITに強い税理士と顧問契約を結んでいるので話も早く、良い節税の提案をしてくれているので、とてもストレスがなくなりました。ですので、何の業種が専門なのか分からない、手数料ゼロの会社にお願いするのはやめてくださいね。これは私からのお願いです。

下記の表で、法人設立の費用についてまとめてました。

方法 実際の費用 会社設立後
自分で自力でやる ×
24万円

特になし
手数料ゼロの会社 ×
20万円+顧問料
×
顧問契約の強制
設立代行のみの会社
21万円程度

特になし

さて、設立代行のみの会社と言っても、本当にたくさんあります。そこで、1万円程度で法人を設立してくれ、かつ会社設立後に顧問契約を強制されない会社を私の方でいくつか探してみました。ご参考までに、こちらに掲載します。

会社格安センター
設立代行費用:7600円

日本会社設立センター
設立代行費用:7600円

ひとりでできるもん
設立代行費用:8500円

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5.法人化はとにかく慎重にことを進めよう

ここまで読めば、法人化について色々とご理解いただけたと思います。法人化とは、普通の人であれば一生に1回、あるかないかのイベントだと思います。ですので、とにかく慎重にことを進めましょう。

また、このブログ「ビジネス心理学」には、起業についての有益な記事がいくつもあります。ぜひ併せて読んでみてください。

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