3分でランチェスター戦略が早わかり! 事例や本も紹介!

あなたはランチェスター戦略という言葉を聞いたことがありますか? ほとんどのマーケティング理論は海外から輸入されたものですが、このランチェスター戦略は日本で作られた戦略です。

ソフトバンクの創業者である孫正義さんや、H.I.S.の創業者である澤田秀雄さんもこの戦略を使って、ビジネスの立ち上げに成功しました(後述します)。

この記事では、マーケティング・コンサルタントの私が、本を読まなくても分かるように、ランチェスター戦略の理論について分かりやすくご説明します。事例はもちろん、おすすめの本なども紹介しますね。

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目次 〜ランチェスター戦略とは? 事例や本も紹介〜

1.ランチェスター戦略とは?(ランチェスターの法則)

2.ランチェスター戦略のメリットとおすすめな企業

3.ランチェスター戦略(ランチェスター経営)の事例

4.ランチェスター戦略は応用が必要

1.ランチェスター戦略とは?(ランチェスターの法則)

ランチェスター戦略とは?(ランチェスターの法則)

時は昔。第一次世界大戦のとき、イギリス人のエンジニアであるフレデリック・ランチェスターは疑問に思いました。

「軍の戦闘力は何によって決まるのだろう?」そこから、フレデリック・ランチェスターの研究が始まります。

実は、こういった戦争の研究というのは、昔からたくさんあります。東洋であれば、孫子の『兵法』であり、西洋であれば、クラウゼヴィッツの『戦争論』などがそれです。

しかし、フレデリック・ランチェスターのスゴいところは、歴史上はじめて、戦闘力を「数字の計算式」で表したこと。今までの戦争の理論は、「敵をあざむくにはまず味方から」みたいな精神論が多かったのです。

このランチェスターの法則には、2つの理論があります。1つは「弱者の戦略」の理論であり、もう1つは「強者の戦略」の理論です。

このランチェスター戦略がビジネスにも応用され、今ではすっかりビジネス戦略になったということです。ということで、この章より先はすべて、戦争の話ではなく、ビジネス戦略についての話をします。

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1-1.ランチェスター戦略「弱者の戦略」の理論

ランチェスター戦略によれば、弱者と強者では戦い方が異なります。弱者の戦略をひとことで表すなら、差別化戦略です。もっと分かりやすく言うと、大企業が入ってこないような小さな市場(ニッチ)に特化する、ということです。

あなたは、マニーという会社をご存知でしょうか? 医療でつかう「手術用の針」の専門メーカーです。すごくマニアックな商品ですが、手術用の針の業界シェアで70%をほこります。売価の材料比率はわずか1%とのこと。利益率が極めて高いことでしられています。

マニーも一時期は外科用のメスにも参入していましたが、ライバル企業にコテンパンにやられてしまいました。それ以来、手術用の針に特化したのです。このように、他の企業が入ってこないくらい小さな市場に特化するのが「弱者の戦略」なのです。

1-2.ランチェスター戦略「強者の戦略」の理論

一方で「強者の戦略」ですが、こちらは追随戦略と言えます。弱者が差別化して出してきた商品と同じような商品を、強者は後から出す(追随する)のです。

たとえば、自動車業界のトヨタが、ホンダに対してこの戦略をしています。ホンダがインサイトというハイブリッド・カーを出したことをご存知ですか? それを見たトヨタは、ホンダのインサイトよりも「安い」価格でプリウスというハイブリッド・カーを出しました。

するとどうなるのか? トヨタのプリウスの方が安いので売れるわけです、当然のことながら。その結果、ホンダのインサイトはあまり売れず、すでに販売終了してしまいました。

要は、自分よりも小さな企業が差別化する商品を出してきたら、それと同じような商品を出すのです。できればそれよりも安い値段で。すると、差別化されるのを防げる、ということですね。

以上をまとめると、こうなります。

ランチェスター戦略の手順

  • ステップ1

自分が1位をとれる小さな市場(ニッチ)でトップになる(弱者の戦略)

  • ステップ2

その小さな市場で、自分よりももっと小さな会社がさらにニッチな商品を出してきたら、それと同じような商品を出し、差別化されることを防ぐ(強者の戦略)

つまり、ランチェスター戦略とは、自分よりも強い相手に対しては弱者の戦略をとり、自分よりも弱い相手に対しては強者の戦略をとるのです。ランチェスター戦略が、別名「弱い者いじめの戦略」と呼ばれるのはこれが理由です。

2.ランチェスター戦略のメリットとおすすめな企業

ランチェスター戦略のメリットとおすすめな企業

さて、なんとなくランチェスター戦略がどういうものなのか分かったところで、ランチェスター戦略について、さらにくわしくみていきましょう。

2-1.ランチェスター戦略のメリットとデメリット

はじめに、ランチェスター戦略のメリットとデメリットですが……正直なところ、デメリットはありません。メリットだけです。基本的なビジネスの戦略なので、ランチェスター戦略を知らないと、お話にもならないのです。

自分があきらかに弱者なのに、小さな市場に特化しないで「私は何でもできます」みたいなことを言えば、絶対に売れません。ビジネスの世界から退場することになるだけです。

あるいは、弱者が市場に参入したときに、それに追随して商品を出さなければ、あなたの利益が食われるだけです。シリコン・バレーの格言「他人に食われるくらいなら、自分で自分を食ってしまえ」のとおりです。

なぜ、スティーブ・ジョブズは、iPhoneを出すことでiPodの売上が下がることがわかっているのに、あえてiPhoneを出したのか? iPhoneには音楽再生の機能がついていますから、iPhoneを出せばiPodなんて売れなくなりますよね。

それは、MP3プレイヤーの市場に参入してきている他社に、iPodの利益を食われたくないからです。自分でiPodの売上を減らしてでも、iPodの利益をiPhoneで食ったほうがマシだからです。

2-2.おすすめな企業と、おすすめできない企業

正直なところ、ランチェスター戦略がおすすめできない企業はありません。これはビジネスの基本戦略であり、知っていてしかるべき。

常に自分の業界に目を向け、強者の弱点を探し続け、弱者の行動に目を光らせましょう。強者の弱点を一気に突き、弱者が自分の弱点をついてきたら同じような商品を追随してだす。

ビジネスというのは、このプロセスをずっと繰り返すことなのです。手を打つのが遅かったり、手を打てなかったりすると、会社の業績はガクンと下がっていきます。まわりの環境が変化しつづけるからこそ、自分も変化させていく。時代に合わせて味を変え続けるラーメン屋さんのようなものですね。

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3.ランチェスター戦略(ランチェスター経営)の事例

ランチェスター戦略(ランチェスター経営)の事例

ランチェスター戦略は、ビジネスの基本戦略であり、本当に多くの企業がやっています。その例は、枚挙にいとまがありません。この章では、有名な、ソフトバンクの孫さんの例をあげようと思います。

3-1.出版事業を軌道に乗せたソフトバンク

ソフトバンクは、SBクリエイティブという出版社をもっていることをご存知ですか? この出版社、最初はパソコン雑誌を出すところからスタートしました。

なぜなら、ソフトバンクは創業当時、パソコンソフトの卸売業をしていたからです。パソコン雑誌を出せば、パソコンソフトの売れ行きがよくなり、パソコンソフトの卸売業ももうかるという流れです。

では、どうやってパソコン雑誌を創刊したのか? 他のパソコン雑誌は、色々なメーカーのパソコンを全部取り扱っていました。そこで、ソフトバンクは小さな市場に特化したパソコン雑誌を創刊することにしたのです。

まず、NECのPC8000シリーズに特化した専門誌『Oh!PC』と、シャープのMZ-80Bシリーズに特化した専門誌『Oh!MZ』を同時に創刊。他の雑誌とはちがって、せまく深掘りした記事がユニークで、これが大ヒットします。

SBクリエイティブは1年目から8億円の売上をあげることに成功。2年目には35億円の売上を達成しました。

3-2.ランチェスター戦略(ランチェスター経営)への批判

ランチェスター戦略には批判もいくつかあります。たとえば、そのひとつが、ランチェスター戦略だけでうまくはいかない、というもの。

そりゃ、そうですよ(笑)。たったひとつの戦略だけでうまくいくほど、ビジネスは甘くありません。たとえば、『Oh!PC』も『Oh!MZ』も、今は廃刊になっています。PC8000シリーズも、MZ-80Bシリーズも、今では売れていませんから、その専門誌も売れるわけがありません。

他の批判としては、ランチェスター戦略の「地域No.1をめざせ」というやり方が、ネット通販の時代では通用しなくなってきているというもの。これは、素晴らしいご指摘ですね。

昔は、大企業の力が手薄になっている「●●県●●市」だけに特化する、という方法が有効でした。が、ネット通販の場合、商圏は全国になりますので、地域ターゲティングは効果が薄れてきています。

ですが、何かの商品に特化するという方法はいまだに有効です。いや、昔以上に効果的になりました。たとえば、「このホームページは、マフラーの専門サイトです」というような商品に特化したホームページはとても強い。

商品に特化するのが、ネット通販時代のランチェスター戦略の使い方になるでしょう。

4.ランチェスター戦略は応用が必要

そうそう、オススメの本を紹介するのを忘れていました。ランチェスター戦略の本はいろいろとありますが、『小さな会社・儲けのルール』です。この本は、10万部を突破した、ランチェスター戦略の本でもっとも売れた本です。

小さな会社・儲けのルール―ランチェスター経営7つの成功戦略

小さな会社・儲けのルール―ランチェスター経営7つの成功戦略
 竹田 陽一 (著), 栢野 克己 (著)

ただ、この本にかぎらず、ランチェスター戦略の本は「地域No.1をめざせ」というように、いずれも事例が古いことが多いです。

前述したようにネット通販の場合は応用が必要ですので、そこだけは気をつけてください。

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