自己啓発本を読んだり、自己啓発セミナーに参加すると「コンフォートゾーン」という言葉を聞くことがあります。そして、講師や著者はこう言うのです。「成功したかったらコンフォートゾーンを抜けださないと! 成功はコンフォートゾーンの外にあるんだから!」
とはいえ、この記事にたどり着いた方あなたは、「そもそもコンフォートゾーンの意味を知らない」とか、「意味はわかるけど、結局どうやって変えたらいいのか分からん!」と感じているかもしれません。
これから、コーチとして400人以上の方のコンフォートゾーンを変えてきたわたしが、コンフォートゾーンと何なのか、どうやってコンフォートゾーンから抜け出せばよいのか、をお伝えいたします。
記事を読み終わるころには、コンフォートゾーンを正しく理解できて、チマタの自己啓発セミナーに参加するより、ずっとラクにコンフォートゾーンをつくり出すための基礎が身についていると思います。楽しみに読みすすめてください。
初めて当サイトに訪れた方へ
ビジネス心理学とは?目次 〜コンフォートゾーンから抜け出す具体的な方法とは?〜
1.コンフォートゾーンの心理学での意味とは?
この章ではコンフォートゾーンをくわしく理解していただくために、下記の図をつかってなるべく簡単に話をすすめていきます。コンフォートゾーンはシンプルな理論だからこそ、誰にでもわかりやすく自己啓発でも用いられやすいのです。
コンフォートゾーンとは?
しかしながら、正しく理解していないと、単に無茶をして痛い目にあうだけ、という悲しい結果にもつながります。何ごとも本質をつかむことが大切ですね。
1-1.コンフォートゾーンとは?
コンフォートゾーンとは、日本語だと「安全領域」とか「快適領域」と訳されます。図の一番真ん中の領域です。つまりは、わたしたちがストレスや恐れ、不安を感じることがなく安心して過ごせる環境のことです。
もともとは、1908年に、アメリカの心理学者であり、動物行動学者でもあるロバート・M・ヤーキーズと、同じく心理学者のジョン・D・ドットソンが提唱した「ヤーキーズ・ドットソン の法則」に端を発しています。
「ヤーキーズ・ドットソン の法則」とは、わたしたちはある程度のストレスを感じていたほうが、ストレスがまったくない状態よりも作業の効率が上がるというものです。
たとえば、あなたが社会人になったばかりのころを思い出してください。右も左もわからない状態で、「なにをどうやればいいの? どういうルールなの? 職場の人のこともよくわからないし、もうイッパイいっぱい!」と、ストレスが多い状態だったでしょう。
とはいえ、慣れてくるとそんな不安もどこ吹く風。入社したころのてんてこ舞いな状態も、やがて日常となり、不慣れな環境によるストレスも感じにくくなっていませんでしたか?この、環境になれている状態がコンフォートゾーンの中にいるということです。
おもしろいことにコンフォートゾーンの理論は、職場環境だけでなく、収入のような明確な数字にあらわれるものにも当てはまるのです。
たとえば、あなたが営業の仕事をしていて、年収1000万円を3年以上続けているとしましょう。この場合は、年収1000万円があなたのコンフォートゾーンになります。しかしながら、たまたま不運と不調が重なって、年収が700万円に落ちてしまったとします。
この時、自分のコンフォートゾーンは「年収1000万円」なのだ、という感覚が強ければ、年収を1000万円に戻そうと努力をしなくても、次年度には勝手に戻ってしまいます。それは、年収700万円は居心地悪く感じてしまうので、無意識に年収1000万円になる行動を取ってしまうからなのです。
初めて当サイトに訪れた方へ
ビジネス心理学とは?1-2.コンフォートゾーンの外のラーニングゾーンとは?
コンフォートゾーンから一歩出た状態です。わたしたちが成長するには、自分が余裕を持って安心を感じることができるコンフォートゾーンを広げ続けなければなりません。そのために必要なのが、ラーニングゾーンです。
ラーニングゾーンとは、わたしたちがパニックにならない程度のストレスを感じる状態です。アメリカのヒューストン大学の教授であるブレネー・ブラウンは、アメリカの新聞紙NewYork Timesで「わたしたち人間は、コンフォートゾーンから抜け出すたびに、適度な不安の状態に慣れていく」と発言しています。
つまり、わたしたちが進化するためには、適度な不安を感じる状態を定期的に克服していくことが必要なのです。
前章でとりあげた収入の例で説明します。あなたのコンフォートゾーンが年収1000万円だったとして、あなたが年収2000万円を達成したいと望むなら、これまでのコンフォートゾーンから一歩抜け出た行動が必要なのです。
年収2000万円の人は、あなたにはない独特の価値観と行動を持っています。あなたが、その価値観と行動に自分のコンフォートゾーンを合わせなければいけないのです。
わたしは昔、友人に誘われてネットワークビジネスの販売員が主催するセミナーに参加したことがあります。
その時、「成功者」とあがめられている販売員のリーダーが、「成功したかったらラーニングゾーンにいかなければダメ、そのためにはキミらの価値観でなく、成功者の価値観にあわせて行動しないと!」と繰り返し説いていました。彼の言うことも理にかなっていたわけですね。
1-3.パニックゾーンとは?
ラーニングゾーンに踏み込むことの大切さはご理解いただけたでしょうか? ここで注意が必要なことが、なにごとも「いいアンバイ」というものがあるということ。
かつてわたし自身がコンフォートゾーンについて学んだ時、「そうか! ストレスや不安、恐怖を感じる行動や環境に突っ込んでいけばいいんだ!」と単純に思い込み、当時やっていたセールスをそれまでの友人たちに見境なくくり返して、信用を失ったことがあります。
一度失った信用を取り返すことはムズカシイもの(涙)。なにごともちょうどよいバランスがありますので、気をつけましょう。
また、人によってはあまりにストレスが強すぎてパニックになって、逆にパフォーマンスがオチてしまうこともあります。この状態をパニックゾーンといいます。パニックゾーンにいると、成果は出にくく、自己評価も下がりがちです。しっかり現状把握をして、適度なストレスや不快の状態をみつけましょう。
2.コンフォートゾーンの変え方/作り方
さて、ここまでの情報はインターネットや自己啓発セミナーなどでも紹介されています。しかしながら、肝心の正しいコンフォーゾーンの抜け出し方は、なかなか教えてくれるところがありません。この章では心理学に裏付けされた、確実にコンフォートゾーンを変えていく方法をご紹介いたします。
結論から申し上げますと、「自己肯定感」と「自己効力感」をあげることです。自己肯定感や自己効力感という言葉を聞くのがはじめてでも、理解できるようにひとつずつ說明いたしましょう。
2-1.コンフォートゾーンの変え方|自己肯定感を高める
まず、自己肯定感とはひとことで言うと「ありのままの自分をどれだけ認められているか」という感覚のことをいいます。自己肯定感が低いと、失敗した時に自分を責めたり、ムダに大きなストレスを感じたりします。ですので、ラーニングゾーンに対して、必要以上に恐怖を感じやすいのです。
では、どうすれば自己肯定感をあげることができるのか? ここでは、「世の中のすべてのことを、一度肯定してみる」ということをオススメいたします。たとえば、キライな人やキライな仕事があっても、「まあ、ああいう人がいてもいいかな」とか、「こういう仕事もおもしろいところがあるかもね」と一度認めてみるクセをつけるのです。
あなたが、自己肯定感をさらに高めたいをお考えなら、くわしい情報を下記の記事に書いていますので、必ずご覧ください。
2-2.コンフォートゾーンの変え方|自己効力感を高める
自己効力感とは、モノゴトに対してどれだけ「自分はデキる」と実感できるかという感覚のことです。自己効力感が低いままだと、わたしたちはうまくいくやり方を知っても、自分ができる感じがしないので結局行動しない(=コンフォートゾーンにとどまる)という選択をするのです。
自己効力感を高めるには、ひとつずつでいいので「自分はデキるんだ」という感覚を大切に感じ続けることです。ここでは、わたしがかつて心理学の深い知識を持つ経営者からうかがったおすすめの方法を紹介します。
それは、どんな簡単なことでもいいので、10コだけ毎日必ずやることを決めます。そして、チェックリストを作り、1つの行動が完了したら1コずつチェックをつけていくのです。わたし自身はiPhoneアプリの「習慣チェック」というアプリをつかって、毎日の自分の行動をチェックしていました。
チリも積もれば山となる。この習慣を1〜2年ほど続けていたら、自己効力感がみるみるうちに高まって、ある日、ふつうに自分を肯定している自分自身に気づいたことを覚えています。
初めて当サイトに訪れた方へ
ビジネス心理学とは?3.コンフォートゾーンでおすすめの本はあるのか?
「コンフォートゾーンをくわしく学ぶためにおすすめの本はありますか?」コチラもよく聞かれる質問です。しかしながら、コンフォートゾーンという言葉自体は自己啓発セミナー業界で広まった言葉ですので、正直に言うと推薦図書をご紹介することはムズカシイのです。
疑似科学ともいえる自己啓発本なら、何冊か類書はありますが、どれも著者の主観で書かれており、科学的な裏付けがないものばかりです。
コンフォートゾーン自体は、それほどムズカシイ理論ではないので、この記事を読んだら即実践していただきたいですね。
4.苫米地英人はコンフォートゾーンをこう説明しています
国内の自己啓発業界で、コンフォートゾーンという言葉を広めたことで有名なのが、苫米地英人さんです。『コンフォートゾーンの作り方【聴くだけで目標達成できる!CD付】~図解TPIEプログラム~』という本の中で、コンフォートゾーンについて彼なりのくわしい解説をしています。
苫米地英人さん自身は、アメリカのコンピューターサイエンス分野でトップクラスのカーネギーメロン大学で博士号をとった方です。しかしながら、心理学の分野で論文を書いた実績はありません。また、コンフォートゾーンについての主張も、科学的根拠はなく、苫米地さん自身の思い込みの部分が強いともいわれています。
そういうわけで、苫米地さんの理論を真実だと信じこむことはおすすめいたしません。また、苫米地さんについては、論文がない、洗脳テクニックばかりで参加者が結果がでない、など以下の記事でかなりくわしく紹介しています。
人物に興味がある方は、ご覧いただくとモノゴトの本質を見る目が養われるでしょう。「有名人の意見は必ず正しい」という思い込みを外すには最適な記事です。ぜひお読みください。
5.コンフォートゾーンは一歩ずつ抜けだそう
コンフォートゾーンを抜け出すカギは、前述したように「自己肯定感」と「自己効力感」を高めること。しかしながら、こういった感覚は急激に高まるものではありません。鍾乳洞の岩が長い歳月をかけてカタチを変えるように、コツコツした積み重ねが、数年たったときに大きな変化としてあなたを支えてくれます。
もしあなたが「大きく成功したい!」とか、「自分をガラリと変えたい!」と望んでいるなら、”一発逆転思考”でなく、”コツコツこそ最大の近道”と覚えておきましょう。きっと、あなたの人生を大きく変えてくれる言葉だと確信しています。