あなたは、インナーチャイルドって聞いたことありませんか? 親との関係に悩んでいて、わたし、もしかしてアダルト・チルドレンかもしれない……、などと悩んだことがある方にとっては、書籍などでおなじみかもしれません。
インナーチャイルドとは、日本語で「内なる子供」と訳され、「傷ついた子どもの心」のことを指すとも言われています。特に最近出版されている女性向け恋愛指南本や自己啓発本、スピリチュアル本には、必ずといっていいほど“インナーチャイルド”のことが書いてあります。
ですが、わたしも数冊読んで調査してみましたが、しっかりとした根拠はなにも書かれていなくて、ただインナーチャイルドを癒やせば、人生良くなる! 人生ハッピー! 恋愛も、仕事も、お金のことも、うまくいなかないのはインナーチャイルドのせいだ!といった論調です。
では、インナーチャイルドって具体的になんなのでしょう? この耳ざわりのいい言葉を、ちょっと耳の痛い言葉で斬っていきます。安心してください。インナーチャイルドの癒やし方も紹介します。
目次 〜診断も不要! インナーチャイルドを自分で癒す〜
1.インナーチャイルドとは?
インナーチャイルドは、日本語で「内なる子供」と訳されています。では、“内なる”とは? こころの中という意味でしょうか。心の中に住んでいる子供の自分……といった意味となるようですね。
諸説ありますが、「子供の頃の記憶や感情」を指すようで、主にネガティブな記憶やそれに伴う感情(親に怒られた、友達にいじめられた、さみしかった、つらかった、孤独を感じた等)が中心のようです。
その子供のころの負の感情を抑えつけたまま、わたしたちは大人になり、この抑えられた負の感情が癒やされないままだと、人生がうまくいかなくなる。だから、インナーチャイルドを癒やしましょう!というのが、一般的な考えのようです。
1-1.インナーチャイルドの起源
非常にあいまいな書き方ばかりになってしまうのは、インナーチャイルド自体がとてもあやふやな概念だからです。大学などで心理学を学んだ方ならわかると思いますが、インナーチャイルドは心理学用語ではありません。
日本国内の大学の正統な心理学科でインナーチャイルドについて教えているということは、たぶんないと思われます。では、いったい誰が言い出したのでしょうか?
わたしが調べた結果なので、正確ではないかもしれませんが、この書籍の中で“インナーチャイルド”という言葉と概念が日本で初めて語られたようです。
『インナーチャイルド―本当のあなたを取り戻す方法』
ジョン ブラッドショー (著), 新里 里春 (翻訳)
2001年に改訂版が出版されていて、初版は1993年に出版されているようです。著者はアメリカのセラピストでジョン・ブラッドショーという方です。大学教授など心理学の専門家が書いた本ではありません。
この書籍の特徴は、著者自身がアダルトチルドレン(父親はアルコール依存症)であり、それをご自身で癒していった過程を書籍にまとめているという点です。
1-2.インナーチャイルドとアダルトチルドレンの関係
さきほどから何度か出てきた“アダルトチルドレン”という言葉をあなたは聞いたことがありますか。実は、インナーチャイルド(療法)は、アダルトチルドレンを癒やす手法の中のひとつに過ぎないのです。
アダルトチルドレンも正当な心理学用語ではありません。不幸な家庭で育てられた子供が大人になっても子供時代の記憶(トラウマ)に縛られてしまい、人生がうまくいかないままで生きているといった意味でしょうか。わたしも一時期、このアダルトチルドレンという言葉にハマって、関係書籍を読み漁りましたが、根本的な解決には至りませんでした。
この後の章で、他の書籍やサイトではあまり書かれていないようなインナーチャイルドの癒やし方をご紹介しますが、基本的に子供時代にイヤな経験、悲しい経験をまったくしたことがない人間など、いないに等しいということは知っておいてくださいね。
2.インナーチャイルドを自分で癒す|基礎知識
ここから、インナーチャイルドの癒やし方を紹介します。その前にインナーチャイルドを癒やすことのメリットとデメリットや危険性を知っておきましょう。
2-1.インナーチャイルドを癒やすメリット
インナーチャイルドを癒やすメリットは、過去のつらい記憶にとらわれずに生きることができるようになるということでしょうか。スピリチュアル(と分類されている)本で書かれているような、奇跡が起きたり、劇的に人生が変わるようなことはあまり期待しないほうがいいでしょう。
悲惨な子供時代を過ごしたような方の場合、その記憶から、人間関係全般、とくに恋愛関係がうまくいかないことも多いと聞きます。そういった方の場合は、インナーチャイルドを癒すことで、傷ついた子供時代の自分を客観的に見ることができ、人間関係が好転するといったことがあります。
2-2.インナーチャイルドを癒やすデメリット
では、デメリットとは? この後の章でインナーチャイルド療法の危険性を書きますが、まず、過去のイヤな記憶や感情をもう一度掘り起こす作業が必要になってきます。
もし、あなたが子供時代のある時期の記憶がすっぽりと消えている、すぐに思い出せないといったことがあったら、ムリヤリ思い出そうとしないほうがいいでしょう。心を守るための防衛機制がはたらいている可能性が高いです。
また、インナーチャイルドと同化してしまい、子供っぽいことばかり言ったり、行動をしていると「痛い人」と思われてしまいます。気をつけましょう。
2-3.インナーチャイルドを癒すことの危険性
あまり知られていませんが、心が壊れてしまうかもしれないほどのショッキングなできごとを経験したとき、記憶がなくなってしまうことがあります。2−2.で書きましたが、トラウマになっているようなできごとは、忘れてしまっている場合も多いのです。
主人公が記憶喪失のロマンチックなドラマや映画をあなたも観たことがあるのではないでしょうか。映画やドラマの場合は、都合よく主人公が思い出したりするのですが、現実において、突然思い出すことは非常に危険です。自分ひとりでは対処できず、専門家に頼らざるをえなくなったりします。充分注意してください。
ヒプノセラピー(催眠療法)なども、最近はかなりポピュラーになりましたが、腕のいいヒプノセラピストを見つけることは非常に困難です。また、インナーチャイルドを癒やすセミナーなども流行っているようですが、講師は素人同然と思っていいでしょう。ハマってしまわないように充分に注意してください。
どうしても、専門家に頼りたいという方もいらっしゃると思います。そういった方にはこちらの記事をオススメします。カウンセラーやセラピストはまず、自分に合った人を選択するところがいちばんむずかしいので、必ず読んでから専門家のお世話になりましょう。


ヒプノセラピーについては以下の記事をお読み下さい。ヒプノセラピーとは何なのか? という解説から始まり、ヒプノセラピーの効果や向き、不向き、ヒプノセラピーを実際に受けてみた3人の体験談、ヒプノセラピストを選ぶときの注意点など、ヒプノセラピーについてより詳しく解説しています。この記事を読めばヒプノセラピーがどんなものなのか一通りわかるはずです。

3.インナーチャイルドを自分で癒す|3つの提案
インナーチャイルドの癒やし方は、もうさまざまな情報がありすぎて食傷気味ではないですか。癒やしが進んでいるのかいないのか、よくわからないようなものも多いですよね。
ここでは、「インナーチャイルド」でネット検索しても、たぶん出てこない根本的な癒やし方の提案をしたいと思います。別にわたしが発明したものでもなんでもありませんが、わたし自身が経験して、効果を感じたものを紹介します。
3-1.グリーフワーク|戻ってこない子供時代を葬る
本来のグリーフワークは、身近な人と死別して悲嘆に暮れる人のために行われる心のケアプロセスです。離婚や失恋などの別離の際にも効果があると言われています。
これをなぜ、インナーチャイルドに??
あなたは、今何歳ですか? 何歳でもいいですが、どんなに今嘆いたとしても、子供時代に戻って楽しい体験したいと願ってもムリですよね。ドラえもんにでも頼まないかぎりは。だから「いつまでも過去を嘆いて悲しむことは、もう終わりにしましょう!」という提案なのです。
通常のグリーフワークの場合もかなりの時間がかかります。まずは、もう戻ってこない子供時代の悲しみをしっかりと感じ切りましょう。ノートに嘆きを書き連ねてもいいと思います。数日間かかることもあるでしょうが、出しきるまで嘆きを止めないでください。
感情を抑圧してきた人は、泣くことができないことも多いですね。そういう人は、絶対に泣けると評判の映画を観たり、小説を読むのもおすすめです。コツは、一時期、徹底的にやることです。周りから、なんか最近暗いね……などと言われるかもしれませんが、気にせず悲しみましょう。
やり続けると、ふと、我に返って、「もう子供時代を嘆くことはやめて、今この瞬間を精一杯生きよう!」と思える瞬間がきます。
3-2.内観療法|親への感謝なんてムリと思っている人へ
内観療法の歴史は古く、その源流は仏教(浄土真宗)で「身調べ」という自己反省法で、国際的にも効果が認められている療法です。現在は宗教色は取り除かれ、病院やお寺で行われたりしているようで、本格的にやる場合は、1週間程度泊まり込んで自分自身と向き合います。やりかたは、驚くほど簡単です。
母、父、兄弟、自分の身近な人(時には自分の身体の一部)に対しての今までの関わりを、
1. してもらったこと
2. して返したこと
3. 迷惑をかけたことの3つのテーマにそって繰り返し思い出す。
インナーチャイルドに惹かれてしまうようなタイプは、「親が100%悪い」と考えていたりする場合が多いです。なにを隠そう、過去のわたしはそうでした。
だまされたと思って、やってみてください。思い出したら、かならず紙に書いてください。といってもこれを自発的にやる人は少ないと思います。特に、絶対に絶対に親が100%悪い!と思い込んでいる人は、「してもらったこと」は書き出せません。
しかし、それでも、これをやって欲しいです。わたしの場合、とあるメルマガで「人生変えたきゃ、絶対にやれ!」と書かれていたので、半分ヤケになって「子供時代に親にしてもらったこと50個」を苦しみながら書き出しました。
最初は、2、3個しか書くことはないと思ったんです。でも、ちゃんと50個書けました! 書き終わって、泣きはしませんでしたが、親に対する感謝の気持ちというのが、そのとき初めて湧いてきました。
3-3.童心に戻って遊ぶ|飽きたら止めること
最後は、いちばん簡単ですが効果はそれほどないと思われます。それは、いくら童心に戻って……といったところで、純粋な子供の自分で経験することは不可能だからです。
子供のころ、お菓子を買ってもらえなかった? じゃあ、オトナ買いしちゃいましょう!
子供のころ、おもちゃで遊べなかった? じゃあ、おもちゃを買って遊びましょう!
子供のころ、かわいい服を着せてもらえなかった? じゃあ、こっそりゴスロリ服買ってみましょう!
から始まって
子供のころ、●●できなかったから●●しよう
子供のころ、◯◯行けなかったから◯◯行こう
子供のころ、△△やりたかったから△△やろう
子供のころ、・・・・・・・・・・・・
と、いくらでも、増やしていくことができて、際限がなくなります。ある程度なら、やってみてもいいと思いますが、そのうち虚しくなっていくのではないでしょうか。
しかし、やってみることで、子供時代の自分としっかり決別できることもあると思います。やるのであれば、大人であることは一瞬忘れて、心の底から楽しんで遊びましょう。そして、ある程度満足できたらそこで止めましょう。
わたしの場合、しつけの厳しい両親だったこともあって、子供時代はテレビ(特にお笑い番組やバラエティ番組)を見せてもらえもらえなかったりしたので、一時期、夜中までテレビをつけっぱなしで見まくっていたことがありますが、数ヶ月もしたら満足したので落ち着きました。今は、観たい番組だけ(週に2〜3時間くらい)観たら、あとはテレビは消しています。
4.インナーチャイルドを癒すよりも大切なこと
最後におすすめの本を紹介しようかと探しましたが、いまひとつ、いい本がみつかりませんでした。それよりも、手前味噌にはなりますが、こちらの記事をオススメします。
インナーチャイルドを癒やすよりも、もっと効果的に人生を根本から変えることができる方法が書かれている記事です。ぜひ読んでみてくださいね。



最後に、子供時代のあなたに、心から「サヨウナラ」を言ってあげましょう。そして、大人の自覚を持って、一瞬一瞬を大事に人生を生きていきましょう。