商品開発の極意|プロセスから企画書まで、プロが丁寧に解説

商品開発の極意|プロセスから企画書まで、プロが丁寧に解説

「商品開発って、どうすればいいんだろう?」とか「商品開発の企画書ってどう作ればいいのかな?」と考えていませんか?

商品開発で重要なことは良い商品を作ることではありません。良い商品なんて世の中にたくさん溢れていますから、それだけでは売れないのです(商品開発の事例は後述します)。

この記事では、商品開発のプロセスから企画書まで、多くの事例をまじえて解説します。また、売れる商品かチェックする3つの視点も解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次 〜商品開発のプロセスから企画書まで解説〜

1.商品開発とはなにか?

2.商品開発の事例

3.商品開発のプロセスを徹底解説

4.商品開発を学ぶうえでオススメの本 3選

5.商品開発がすべてではない

1.商品開発とはなにか?

商品開発とはなにか?

商品開発というのは、文字通り商品を開発することです。この章では、商品開発についてカンタンに説明します。

1-1.商品開発のメリット/デメリット

まず、商品開発のメリットとはなんでしょうか? これは分かると思いますが、「金のなる木」になる商品が作れるかもしれない、ということですよね。

では、商品開発のデメリットとはなんでしょうか? それは、新商品がヒットするとは限らないため、商品開発にかけた時間やお金がムダになるかもしれないということです。

アメリカの20400社を調査の母集団にした名著『ビジョナリー・カンパニー4』によれば、「イノベーションの数が多くても成功につながらない」という事実があきらかになっています

実はそこまで積極的に商品開発をしなくても、企業は成功できるのです。

1-2.商品開発がオススメの企業/オススメできない企業

世の中にはいろいろなビジネスモデルがあります。商品を作るだけの製造業もあれば、何も商品を作らない卸売業もあります。つまり、そもそも商品開発する必要がない業種もたくさんあります。たとえば文房具屋の場合、文房具を仕入れて売るのが仕事であり、商品開発の必要はありません。

また、商品開発が必要な会社であっても、そこまで積極的な商品開発は必要ないかもしれません。たとえば、多くの経営者は既存の商品が売れなくなると、いきなり新しい商品を作って売上を増やそうとします。が、これはあまりオススメしません。

それよりも、今ある商品を、今とはちがう広告を作って売る方が良いのです。たとえば、やずやなどのテレビ通販企業を見てください。同じ商品を、テレビ広告だけ変えて、繰り返し、繰り返し売り続けていますよね。新しい商品を作るためには膨大なお金と時間がかかるからです。

同じ商品を、売り方だけ変えて、ひたすら売る。これが利益率が高いビジネスのキモです。こう考えると、商品開発がオススメの企業というのは、新商品を出し続けた方がいい業種くらいということですね。たとえば出版社や映画制作会社でしょうか。

2.商品開発の事例

商品開発の事例

それでは、この章からは商品開発の事例を見ていきましょう。

2-1.商品開発の成功例|カビキラー

カビ取り剤といえば「カビキラー」。1982年に発売され、30年以上にわたってカビ取り剤の市場でNo.1の売上を持っている商品です。

この商品が生まれたきっかけはお風呂場のタイルの黒ずみを取りたいという、主婦のニーズでした。当時はカビ取り剤が存在しなかったため、この黒ずみをカンタンにとる方法もありませんでした。

そこで、多くの主婦が、仕方なく洗剤をつけたタワシでゴシゴシこすっていたのです。商品開発の担当者は、主婦のこの行動に着目し、カビキラーを開発しました。

このように、売れる商品を開発するポイントは、「やりたくないけれども、しかたなくやっていること」に注目することです。そこには、葛藤や不満というヒットの要素があるからです。

※なお、このビジネス心理学には「商品開発」のストーリーがたくさん書いてある記事があります。ぜひ、こちらをお読みください。カビキラーの事例も、この記事がくわしいです。

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2-2.商品開発の失敗例|ハーレー・ダビッドソンの香水

大型バイクのメーカーであるハーレー・ダビッドソン。この会社は昔、香水を販売していました。今では販売していないので、知らない人も多いと思いますが。

この香水、なぜ売れなかったのでしょうか? それは、ハーレー・ダビッドソンのブランドイメージである「男くさい、無骨で格好いい雰囲気」に合わない商品だから。ハーレー・ダビッドソンの既存のお客さんは、香水に見向きもしなかったのです。

ハーレー・ダビッドソンに乗っている人に似合う匂いとは「革ジャンの革の匂い」ではないでしょうか? つまり、香水ではないのです。

世の中で売れている商品であっても、それが自社のお客さんにも売れる商品とは限りません。お客さんのことを理解することは大切ですね。企業とお客さんには、認識のズレや感覚のズレがあるのです。

3.商品開発のプロセスを徹底解説

商品開発のプロセスを徹底解説

この章では、実際に新商品を開発するプロセスをご紹介しましょう。

3-1.商品開発の5ステップ

それでは、商品開発の順序を理解していきましょう。

商品開発の5ステップ
(1)自社のビジネスモデルを考える
(2)顧客、競合、自社のリサーチをする
(3)アイデアを出し、商品を試作する
(4)市場に出してテスト販売する
(5)商品化する

まず大切なのは、(1)自社のビジネスモデルを考えることです。手垢がついた例ですが、キヤノンは家庭用インクジェットプリンターを販売していますが、プリンター本体では利益を出していません。高いインクカートリッジで利益を出しています。

あるいは、AmazonはKindle Fireというタブレットを、ほとんど原価同然の値段で売っています。これは、iPadのおよそ半額。では、どうやって利益を出しているかというと、このタブレットで電子書籍をドンドン買ってもらうことで、1台あたり1万円を超える利益を出しているのです。

このように、商品を作る場合は、まずビジネスモデルを考える必要があります。くわしくは、このビジネス心理学のなかに「ビジネスモデル」についてまとめている記事があるので、これを読んでみてください。

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続いて、(2)顧客、競合、自社のリサーチをします。マーケティング用語では、顧客(Customar)、競合(Competitor)、自社(Company)の頭文字をとって「3C」と言います。

その理由は、バリュープロポジションをさがすためです。これがない商品を大ヒットにはならないからです。

バリュープロポジションとは?(下の図の青い部分)

  • 顧客が求める価値であり、
  • 競合が提供できない価値であり、
  • 自社だけが提供できる価値である。

バリュープロポジション

小さなごちそう』より引用

続いて、(3)アイデアを出して商品を試作してみて、(4)売れるかどうかテスト販売して、(5)売れたら商品化する、ということが多いです。テスト販売というのは、オフラインで福岡限定で販売してみて、売れたら全国発売するようなことです。

とは言え、(3)〜(5)については、かならずしもこのパターンが正解とは言えません。インターネットを使ったサービスなどの場合、いきなり売ってみて、あとから改善する場合も少なくないからです。

たとえば、Microsoftの場合、Windowsをいきなり売って、あとからバージョンアップしていくという方法をとりますよね。流通コストと原価が低い場合、いきなり売って、ダメだったら引っ込めるというやり方でもいいからです。

3-2.商品開発の企画書を公開

あなたは、ダイキン工業をご存知でしょうか? エアコンメーカーとして世界一の売上をほこる大阪の企業です。エアコン「うるるとさらら」のメーカーと言った方が分かりやすいかもしれません。

この「うるるとさらら」は、冬に加湿、夏に除湿をしてくれるエアコンです。夏の除湿(ドライ)機能は当たり前ですが、特筆すべきは給水なしで冬に加湿できること。室外の空気中の水分をつかって、室内に加湿するのです。

無給水で加湿暖房ができるエアコンは、ダイキン製だけ。つまり、前述した「顧客が欲していて、競合が提供できない価値で、自社だけが提供できる価値」、すなわちバリュープロポジションは「加湿暖房」ということですね。

この「うるるとさらら」の企画書が、一部公開されているので参考にしてみましょう。

ネーミングのアンケートの結果(写真中央の③)

『あのヒット商品のナマ企画書が見たい!』戸田覚 立ち読み

e-hon』より引用


見てのとおり、「加湿暖房」というバリュープロポジションを一言であらわすネーミングにしようとしているのが分かりますね。

そして、「うるるとさらら」の企画書のつづきが下記です。 

給水なしで加湿できることや、加湿暖房を求めているユーザーの声を列挙

『あのヒット商品のナマ企画書が見たい!』戸田覚 立ち読み2

e-hon』より引用

また、こちらでは、加湿暖房を消費者が求めていることをあらわすグラフが入っていて、説得力があります。

企画書には色々なことを書きますが、結局のところ、企画書の本質はこうです。

企画書の本質:
「顧客が欲していて、競合が提供できない価値で、自社だけが提供できる価値」が新商品にあることを証明すること

3-3.売れる商品かチェックする3つの視点

結局のところ、商品というのは、実際に売ってみるまで売れるかどうかは分かりません。しかし、あきらかに売れない商品は分かります。それは繰り返しお伝えしている、以下の3点をチェックすればわかります。

販売する前に、最低限確認する3要素
(1)顧客が求めている価値か?
(2)競合が提供できない価値か?
(3)自社だけが提供できる価値か?

まず、「(1)顧客求めている価値か?」ですが、これは、実際のお客さんに話を聞いてみてください。前述の「うるるとさらら」のようなアンケートをオンラインでしてもいいですが、商品開発の初心者のうちは、できるだけお客さんとオフラインで会って、ナマの声を聞くことを強くおすすめします。

実際に、お客さんのリアルな表情、声の抑揚などを聞くと、オンラインでは伝わらない微妙な感情や感覚まで分かるはずです。もし、具体的なインタビューの方法について学びたければ、後述する本を読んでみてください。

「(2)競合が提供できない価値か?」と「(3)自社だけが提供できる価値か?」については、自分の競合の会社のホームページやチラシなどを探せるだけ探し、「何を言っているか」という切り口をメモするといいでしょう。できれば10以上の切り口を書き出し、そこにない切り口で自社だけができることをさがしましょう。

4.商品開発を学ぶうえでオススメの本 3選

商品開発を学ぶうえでオススメの本 3選

商品開発については、色々な本が出ています。これからご紹介するのは、どれも良書ですのでぜひ読んでみてください。

4-1.ヒットの正体

ヒットの正体 1億人を動かす「潜在ニーズ」の見つけ方

ヒットの正体 1億人を動かす「潜在ニーズ」の見つけ方 “そうそう、それが欲しかった”
 山本 康博 (著)

1冊目は、「充実野菜」、缶コーヒー「ルーツ」、「桃の天然水」などのヒット商品を手がけた山本康博さんの本『ヒットの正体』です。

顕在ニーズではなく、まだ顕在化していない潜在ニーズを見つけることなど、商品開発をするための基礎的な知識を身につけることができます。とくにお客さんのニーズを見つけるヒントが満載。

たとえば、潜在ニーズを探るために、お客様に「業界の他の商品」への不満を聞くというテクニック。「この不満を複数組み合わせたものは売れる」というのは、商品開発をしたことがない人にとって目からウロコではないでしょうか。

4-2.あのヒット商品のナマ企画書が見たい!

あのヒット商品のナマ企画書が見たい!

あのヒット商品のナマ企画書が見たい!
 戸田 覚 (著)

2冊目は、『あのヒット商品のナマ企画書が見たい!』です。本の内容は読んで字のごとし。ヒットを出した会社の商品開発部と交渉して、ナマの企画書を見せてもらおう! というものです。企業秘密を公開してもらうために、筆者がどれだけ苦労したのか、私には想像もつきません。

実は、前述した「うるるとさらら」の企画書もこの本からの引用です。他には、オムロンの「体組成計」や、一時期はやったトルコアイスなど、興味深い企画書がたくさん載っています。

4-3.あのブランドの失敗に学べ!

あのブランドの失敗に学べ!

あのブランドの失敗に学べ!
 マット・ヘイグ (著), 田中 洋 (翻訳), 森口 美由紀 (翻訳)

3冊目は海外の本で、ヒット“しなかった”商品について解説してあります。

例えばRJレイノルズ社というタバコ・メーカーがアメリカにあります。この会社は、煙の出ないタバコを出せばヒットするのではないかと考え、無煙タバコの開発にとりかかりました。開発費、なんと6800万ドル。そして、実際に煙もタールもほとんど出ないタバコを開発したのです。

それを販売した結果は? 大失敗でした。愛煙家からすると、魅力がないからです。RJレイノルズ社は、広告費と開発費で合計3億ドルもの天文学的なコストをかけ、しかし、まったく売れないという歴史的なミスをおかしたのです。

企業と消費者の認識のズレですよね。実は、成功例よりも失敗例のほうが多くを学べたりします。

5.商品開発がすべてではない

あなたはヴァージン・コーラをご存知でしょうか? 私も飲んだことがありますが、意外とおいしく、日本でもそれなりの数のファンを獲得したのです。しかし、日本からは撤退。その理由は、コカ・コーラとペプシに流通網をおさえこまれたからです。

もっとひどいのはイギリスで、スーパーマーケットの約半分でヴァージン・コーラが陳列できないようにコカ・コーラとペプシが妨害したのです。さらに、コカ・コーラは広告予算を2倍にして、コーラ業界をおさえこんだのです。

このように、いくら良い商品を作ったとしても、流通やプロモーションがうまくいかないと成功しないのです。商品開発は重要ですが、それがすべてではないということは覚えておいてくださいね。

なお、プロモーションの重要さについては、私が過去に記事に書きましたので、そちらもあわせてお読みください。

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