心理カウンセラーは最近人気の職業のひとつ。でも、「ちゃんと生計が立てられるの?」とか、「実際の収入はどれくらいなの?」、「資格によって収入ってかわるの?」と疑問に思うこともあるでしょう。
この記事では、心理カウンセラーの年収と主な資格についてわかりやすくお伝えします。
私は、心理カウンセラーを養成する学校で働いていることもあり、年間に70人以上は心理カウンセラーとお会いしています。また、私自身も心理カウンセラーとして仕事をしています。
だから、心理カウンセラーを育てる側で働いている私ならではの、業界の事情をお話しできるんです。
この記事を読んでいただくことで、心理カウンセラーを目指すとしたらどんな資格をとればいいのか、または資格は必要ないのか、独立開業したらどれくらいの収入を得ることができるのか……という、あなたの疑問がみるみる解けていくはずです。
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ビジネス心理学とは?目次 〜ついに明らかになった、心理カウンセラーの年収〜
1.日本の心理カウンセラーの実態
日本の心理カウンセラー業界は、需要と供給がアンバランスです。つまり、「心理カウンセラーになりたい」という人の数に比べて、「カウンセリングを受けてみたい」、「カウンセリングが必要!」という人の数が少ないのです。
では、心理カウンセラーは日本国内にどれくらいいるのでしょうか?
1−1.心理カウンセラー人口の実態
もっとも名が知れている心理職の資格は「臨床心理士」でしょう。国内には2万6千人以上の臨床心理士が存在しています。
“参考:一般社団法人 日本臨床心理士協会”
さらに、「心理カウンセラー」と呼ばれる職種にはさまざまな資格が存在し、公的機関や学会が認定するものだけでも20以上の資格があります。また、民間団体が認定する心理職の資格は、クツをぬいで投げれば当たるといわれるほど、たくさんの数があります。
1−2.アメリカと日本の心理カウンセラー事情
日本ではカウンセリングというと「こころが疲れている人が通うもの」というイメージが根強いです。しかし、カウンセリング大国といわれるアメリカでは事情が少し違います。
私の友人はアメリカで心理カウンセラーを4年間やっていました。以前、彼女とこんな話をしたことがあります。
- 私「アメリカの心理カウンセラー業界ってどんな感じなの?」
- 友人「そうね。日本と比べるとカウンセリングが当たり前に日常にある感じ、かな。」
- 私「具体的にお話をうかがってもいい?」
- 友人「もちろん!たとえば、夫婦ゲンカの仲なおりに利用したり、学校だったら成績が下がった子がいるとカウンセラーに相談する仕組みがあるの。国の仕組みとしてカウンセリングが活用されているから、自然にみんなが利用しているって感じね。友だちにグチをいう感覚で、何かあったらカウンセラーに会いにいくのよ。」
- 私「日本とはずいぶん違うものだね。日本だとカウンセリングはこころが疲れている人が通うもの、というイメージがあるもんね。」
アメリカでは、カウンセリングが生活に根付いていて、心理カウンセラーは弁護士や医師に続いて成功者の象徴のような仕事、といわれるほどステータスが高いそうです。
とはいえ、日本では大学院を卒業した臨床心理士ですら、非常勤をかけ持ちしているカウンセラーがほとんどなのです。
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ビジネス心理学とは?2.心理カウンセラーという選択
次に、心理カウンセラーにはどんな種類があるのか簡単に紹介します。前述したように心理カウンセラーに類する資格や職種は公的なものだけでも20以上、民間が発行している資格になるとさらに多く、現在も増え続けています。
しかし、資格を取得すれば高い収入が保証されるわけではないのです。そのことを念頭において次の話を聞いてください。
2−1.臨床心理士
あなたも知っているでしょう?心理職の最高権威とよばれる資格です。資格試験をうけるには、大学院もしくは専門職大学院で学位をとる必要があります。
仕事内容は心理カウンセリング以外に、心理テストなどから性格を分析したり、地域社会に対して生活環境の改善を支援したり、研究活動をおこなったりします。
2−2.産業カウンセラー
民間団体が発行する資格としては、もっともよく知られている心理職の資格です。所定の講座を受講することで受験資格がえられ、試験の合格率も60%という難易度です。
仕事内容は、企業の経営者や社員、または社員の家族へのメンタルヘルス対策や社内でのキャリアカウンセリング、人間関係改善などが主な仕事です。
産業カウンセラーの実態を知りたいなら、こちらの記事を読めば資格取得や取得後の年収などあなたの知りたいことが簡単にわかります。産業カウンセラーに興味があるならこの記事は必ず読んでください。
2−3.精神保健福祉士
福祉資格であり、心理資格ではありません。しかしながら、精神保健福祉士の資格を取れば心理カウンセラーになれると誤解している方が多いので、簡単に説明します。
「精神保健福祉士」は社会福祉業務ではたらく人のための国家資格です。
仕事内容は、精神科病院での入院サポートです。患者の生活技能訓練、就労支援、住居探しの支援、家族からの相談にのるなど、さまざまな仕事があります。
精神保健福祉士に向いている人、資格の取り方や費用、年収などは長くなるのでこの記事では詳しく説明しません。代わりに、下記の記事の6章に詳しい説明が書いてあるので、そちらをお読みください。
2−4.その他の民間資格
他にも、心理カウンセラーには民間の団体が認定している資格があります。その数は毎年、産卵期のメダカのように増えつづけています。しかも、ほとんどの資格は取得したからといって、すぐに仕事に結びつくものは少ないのです。
心理カウンセラーで高収入。
この野望をかなえるためには、資格をとる前から就職先や開業について、十分な勉強が必要です。
また、同じように民間資格を多数の団体が発行している職種に、コーチ、セラピストなどがあります。同じように人の心をあつかう職業ですが、それぞれサービスの目的がちがいます。コーチングやセラピーについては、次の記事でくわしく知ることができます。
最近はストレスや多忙で心が疲労している人が増えており、職場を中心にメンタルの予防が重要視されてきています。それに伴い、心の抵抗力や折れない心を作る「レジリエンス」の資格も注目されています。
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ビジネス心理学とは?3.これが事実!心理カウンセラーの年収の秘密
実は心理カウンセラーは、人気の職業であるわりには公的機関や、大規模な調査をおこなえる大企業が公開している年収のデータは少ないのです。年収について、口コミベースの少数データを公開している民間団体は多いですが、実際は宣伝が目的の、かたよりがあるデータであることがほとんどです。
とはいえ、この章ではなるべく客観性があるデータと、私がこれまで100人以上の心理カウンセラーと会ってきた経験から、心理カウンセラーのおおよその収入についてお伝えします。
3−1.心理カウンセラーの年収の実態とは?
次のデータは、文部科学省が公開しているスクールカウンセラーの平均的な賃金です。
時給:5250円
週あたりの配置時間:10時間程度
年間:35週配置上記のデータから計算すると、勤務校が1校のみだとおおよそ年収180万円になります。2校かけもちすると年収360万円、3校だと年収540万円です。かけもちできる学校の数は2〜3校が一般的でしょう。
心理カウンセラー全体の年収のデータについては、私はこれまでしっかりとした調査結果をみたことがありません。それほど、心理カウンセラーとして活動している人の数に比べて、十分な収入をえられている人が少ないということが理由だと思います。
しかし、私がこれまでたくさんのカウンセラーにあってきた経験からすると、臨床心理士などの名のしれた資格を持っている人でも、年収300〜400万円程度の方が多いように見受けられます。
また、民間の心理カウンセラーの資格を取得した方なら、心理カウンセラーの資格オンリーで生計を立てられている人は30人に1人といったところでしょう。
3−2.心理専門家だけが知っている他の心理職との収入比較
心理カウンセラーと仕事内容が近い、コーチやセラピスト。3つの職種の間に収入差はあるのでしょうか。結論からお伝えすると、心理カウンセラーは国家資格やそれに類する資格が多い分、業界全体で見るとコーチやセラピストに比べて収入は安定しています。
開業する場合は、コーチングがもっとも高収入を狙いやすいでしょう。それは、ビジネスコーチングの場合、高額の料金を設定できるからです。
近年はコーチングビジネスのノウハウも体系化されてきて、年収1000万円〜3000万円クラスのコーチも少なくありません。ただし、コーチングのテーマがビジネスコーチング以外になると、高額料金を設定することは簡単ではなくなります。
また、セラピストは国家資格などもなく、面談の対象者も高額料金に納得してくださる方は集まりにくいこともあり、収入は不安定になりやすいようです。
最後に、3つの職種に共通していえることですが、心理カウンセラーやコーチ、セラピストを養成する「養成講座」を開催する側にまわると高い収入を狙うことができます。
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ビジネス心理学とは?4.心理カウンセラーが年収1000万円を狙う条件3つ
心理カウンセラーになるのは簡単です。とはいえ、実際に心理カウンセラーとしての活動だけで生計をたてるとなると、口でいうほどラクなものではないということがわかっていただけたでしょうか。
ところが!私の知っている方は、おなじ心理カウンセラーでありがながら、年収1000万円をこえる収入をえています。これには理由があります。
まず、心理カウンセラーとしての臨床経験が豊富で、技術がたしかなことが前提です。しかしながら、それだけでは、十分ではありません。あなたがもし「心理カウンセラーになって年収1000万円を狙いたい!」と少しでも考えているのであれば、このまま読みすすめてください。大切なコツをお伝えします。
4−1.条件1:開業する
企業に雇われている以上、心理カウンセラーといえど会社員です。しかしながら、開業した瞬間にあなたは「経営者」になります。
世の中を見わたしてください。お金を持っているのは、事業に成功した「経営者」です。あなたも心理カウンセリングという事業をおこし経営者になれば、あなたの望む収入を得ることは可能になるでしょう。工夫次第で、時間でさえ自分の自由につかうことができます。
もちろん、経営者としての自立と責任は必要です。
4−2.条件2:見込み客を集める
開業に先立ってやらなければいけないことは、見込み客集めです。見込み客とは、あなたのカウンセリングに興味をもってくれる人を集めるということです。
見込み客から一定の割合で、将来的にあなたのお客さんになる人があらわれます。見込み客を集める方法は、人にたくさん会う、広告を売ってメールアドレスを集めてメールマガジンを発行するなど、さまざまなやり方があります。本で勉強したり、すでに成功している心理カウンセラーを研究することをおすすめします。
4−3.条件3:販売する力をつける
集めた見込み客をお客様にかえるステップです。開業して成功する人としない人のちがいは、ズバリ「売るチカラ」の有無。モノを売れる人が、自分のサービスを多くの人に届けて、経済的な自立を実現できます。
たまに、カウンセリングの腕をみがきにみがいて、口コミで自分のサービスが世間に広まり、気がつけば行列ができるカウンセラーに……ということを夢見ている方がいます。きっぱりといいましょう。それは”幻想”ですよ(笑)。
でもね、あなたの売るチカラが上がれば上がるほど、高収入が見込めます。売ることのパワーを信じてください。
4-4.開業しないで稼ぐことは可能?
ここまで読んで、「えー、開業しないと稼げないなんて知らなかった……(涙)」、「私には、独立して開業なんて、ムリよ!」と思われたかもしれません。
しかし安心してください。たしかに、年収1000万円を狙うためには開業の道を選択しないと、かなり難しくなります。とはいえ、企業に勤めたとしても、就職先をよくえらび、着実に経験を積めば、年収600万円以上の収入を狙うことは十分できます。
近年、メンタルヘルスの大切さについて世の中の理解がすすみ、一昔前とくらべて心理カウンセラーの活躍の場が増えていることは確かだからです。
しかしながら、「どこでもいいから、とにかく心理カウンセラーになれれば……」といった意識のままでは、年収300万円代の困窮カウンセラーになりかねませんよ(汗)。稼げる心理カウンセラーを目指しましょう!
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ビジネス心理学とは?5.なぜあなたは心理カウンセラーになりたいの?
ここまで心理カウンセラーの年収の話をしてきました。でもね、「どうしてあなたは心理カウンセラーになりたいのでしょうか?」この質問を自分にすることが大切です。
ただ、「イメージがよいから」という理由で心理カウンセラーになりたいと思っていたりしませんか?もしそうであれば、もう一度、考えなおしてください。心理カウンセラーは人の心を扱う責任の重い仕事です。
また、「心理カウンセラーは簡単にお金を稼げそう」と思っていませんか?現実はそれほど、甘くありません。資格をとって収入につなげようと思うなら、もっと別の資格を検討してみるのもいいでしょう。
下記記事は実際にプロの心理セラピストとしてはたらく男性セラピストの喜びと「ウラ側」にあたる苦悩について本音を暴露しています。心理カウンセラーを目指すのは実態を知ってからでも遅くはありません。ぜひこちらの記事も合わせてお読み下さい。
6.心理カウンセラーは厳しくもやりがいが大きい仕事です
ここまで、厳しいことも書いてきましたが、心理カウンセラーはやりがいが大きい仕事です。面談をしたお客さまから半年後に、こんなメッセージをいただくこともありました。
「先生、お久しぶりです。半年前に先生に面談をしていただいたことがきっかけで、無事に転職をすることができました。心配だった職場での人間関係もうまくいっています。先生のおかげです。今は、毎日がとっても充実しています。これからさらにチャレンジしたいこともみつかりました。本当にありがとうございます!」
たった1度の個人面談がきっかけで、相手の人生を大きく変えることもあります。私や私のまわりの心理カウンセラーのお客さまのなかには、長年の心の悩みが解決した、家族との人間関係がよくなり幸福感が増した、仕事での迷いが消えた、恋愛がうまくいくようになったなど、さまざまなかたがいらっしゃいます。
もしあなたが、本気で心理カウンセラーを目指したいと考え、自分で責任をとり自立する覚悟があるのでしたら、きっと素晴らしい心理カウンセラーになれるはずです。検討を祈ります。
もしまだあなたの中に心理カウンセラーを目指すかどうか迷いがあるなら、以下の記事もぜひ読んでみてください。現実の心理カウンセラーの実態について書いています。この記事を一読してから、本気で目指すかどうか決めても遅くはありません!
もしあなたが、心理療法のひとつであるヒプノセラピー(催眠療法)に興味があるなら以下の記事をお読み下さい。ヒプノセラピーとは何なのか? という解説から始まり、ヒプノセラピーの効果や資格の取得方法なども詳しく解説しています。この記事を読めばヒプノセラピーがどんなものなのか一通りわかるはずです。